通常、納付猶予や申請免除を受けるためには、所得の証明が必要になる。だが、コロナ禍では急激な収入の落ち込みが問題となったため、臨時特例が適用されて、現在は「減収見込み」で利用できる。

 2020年2月以降にコロナ禍によって収入が減少し、所得水準が免除や納付猶予の要件を満たす見込みがあれば申請可能。2021年度分の保険料も、引き続き対象となっている。

 昨年は、コロナ禍で経済環境が悪化し、多数の雇い止めも発生した。そのため、冒頭で紹介したように、納付猶予や申請全額免除を利用した人が、前年度に比べて26万人も多くなったのだ。

 納付猶予や申請免除などの救済制度を利用すれば、当面の生活を守ることはできるが、いつまでも猶予や免除を受け続けることは、老後に不安を先延ばしすることになる。

 前述したように、納付猶予を受けた期間は、老齢年金の受給額にはまったく反映されない。また、申請免除を受けた場合は、免除額に応じて、老齢年金が減額される。全額をきちんと納付した場合と比べると、もらえる年金額は、次のようになる。

・全額免除…………2分の1
・4分の3免除……8分の5
・半額免除…………8分の6
・4分の1免除……8分の7

 40年間、保険料を全額納付した場合に、65歳からもらえる老齢基礎年金の金額は78万900円(2021年度)。だが、たとえば20歳から40年間、全額免除を受けた場合は約39万円で、月額3万円ほどだ(2021年度価額の場合)。年金ゼロよりはいいが、老後の生活費と考えると、かなり心細い。

納付猶予や申請免除制度の陰に潜む
老後の無年金、低年金のリスク

 冒頭で見た国民年金保険料の納付率は、自営業者やフリーランスの人などの国民年金加入者が、どのくらい納付義務を果たしているかを見るための指標だ。保険料を納める義務のある対象月に対して、実際に納めた月数の割合を算出した数字だ。

 分母となる納付対象月には、法定免除、申請全額免除、学生納付特例、納付猶予、産前産後の免除を受けた月数は含まれていない。そのため、納付猶予や全額免除を受けることで、保険料を納めない人が増えても、納付率には影響しない。