そもそも四輪車改革は、八郷前社長時代から積年の課題だった。八郷前社長は、それまでのグローバル拡大路線の修正、すなわち世界での生産能力と販売台数のギャップを埋めるために、生産拠点の縮小を行った。19年に英国工場・トルコ工場の閉鎖を決定したことに加え、日本国内でも狭山工場の閉鎖を決めている。

 600万台の生産能力を目指した時代から、一連の生産能力縮小により、22年3月末の生産能力は514万台まで減少する。ホンダの今期(22年3月期)世界販売は500万台を見込んでおり、ギャップは大きく改善される見込みだ。

 ホンダの最近の業績は、四輪車事業の不振を二輪車事業でカバーする形となっており、前期の二輪事業の営業利益率が約13%に対して、四輪事業の営業利益率はわずか1%にとどまる。世界生産・販売の需給ギャップ、不採算車の広がり、リコールなど品質問題の多発など、ホンダの四輪事業の不振要因が挙げられるが、三部新社長は、引き続きこれらの「宿題」を解いていかねばならない。

 実は、八郷前体制の19年に、将来のホンダ四輪事業の連結営業利益率を7%に高める計画を公表している。三部社長も就任会見は「電動化によって目標を変えることはない」と言い切ったが、電動車化に莫大な投資が必要な中、赤字すれすれの前期1%から7%にまで引き上げるのは容易ではない。

 前述のような英国工場や狭山工場といった内外の主力工場の閉鎖、かつての主力車種の生産打ち切りに加え、車台・部品の共通化などコスト削減をどこまで進められるかが重要なポイントになろう。さらに、新たなEV・FCEVの投入計画においても、どれだけ採算性を高める開発や生産販売体制を構築できるかが焦点といえる。

 その意味では、6月末に北米地域におけるEV投入計画が発表されたことで、電動化については具体的なロードマップが見えてきつつある。

 北米でのEV投入計画は、24年初めにEV量販モデルラインアップの第1弾としてSUV「プロローグ」を発売、24年中にはアキュラブランドからもSUVを発売する。いずれも提携先のGMの「アルティウム」バッテリーを採用し両社共同開発モデルとなる。今後、さらにホンダが主導する新EVプラットフォーム「e:アーキテクチャー」を採用したモデルを20年代後半に投入する予定だ。