著者はハーバード大学とスタンフォード大学に計11年在籍し、世界的権威の2大科学誌『ネイチャー』『サイエンス』に論文が掲載されたスーパードクターだ。
帰国後、東京・錦糸町に「眼科 かじわらアイ・ケア・クリニック」を開設するやいなや、地元だけでなく、噂を聞きつけて全国各地から来院する患者が後を立たない。そんなカリスマ名医の初の著書『ハーバード × スタンフォードの眼科医が教える 放っておくと怖い目の症状25』から、誤解だらけの目の常識と自宅で気軽にできる一生モノの目の健康法を科学的な事実に基づいてお伝えする。
悲しくないのに涙が出る
A
冬になると「自転車に乗っているだけで涙が止まらない」とクリニックを訪れる人が増えるんですよ。
Q
あ、私もそうなんです。なんで悲しくもないのに、涙が出るんでしょう。
A
これもドライアイが原因です。ドライアイで涙の量が減ったり質が変わったりすると、目の表面を潤す涙の保護膜の機能が弱まります。すると、自転車に乗って向かい風にあたったり、タバコの煙がただよってきたりするようなちょっとした刺激でも、目が「大変なことが起こっている!」と過剰に反応し、涙を流して目を守ろうとするんです。
涙の量が多いのにドライアイと診断されてビックリする人が多いのですが、刺激がないときに目を守っている微量の涙が乾いてなくなってしまうと、刺激に敏感になって反対に涙の分泌が大量に増えます。
冬は空気が乾燥していますから、余計にドライアイが生じやすいです。
Q
自転車に乗るときに、メガネやサングラスをかけるとドライアイが改善したりしませんか?
A
ゴーグルのように、目の周り全体をおおうものなら、なおさらいいでしょうね。とはいえ、やはり、ドライアイを根本的に改善したほうがいいでしょう。
涙の通り道が詰まっている場合もある
Q
女性で「涙がにじんでアイメイクが崩れやすい」という人も少なくないですが、これもドライアイが原因ですか?
A
ドライアイが原因のケースが多いですが、涙の出口が詰まる「涙道狭窄」の可能性もあります。
涙は目頭でつくられていると思っている人は多いですが、涙をつくる「涙腺」は上まぶたのこめかみ(目尻)側にあります。涙はまばたきをするたびに目の表面に広がって、最終的には目頭にある排水口である「涙小管」から鼻(鼻腔)に抜けていきます。
泣くと涙だけでなく鼻水も出るのは、涙が鼻に流れ込んでいるからなんです。そして、この涙の通り道のどこかが詰まってしまうと、いつも涙目になってしまいます。これはお年寄りに多い症状でもあります。
Q
涙の通り道の詰まりをとるにはどうしたらいいのでしょうか。
A
目薬では詰まりを解消することができないので、手術するしかありません。
Q
えっ、手術ですか!怖いですね……。
A
一般的に行われているのは、涙の通り道である「涙道」にシリコンのチューブを入れて、2~3ヵ月間放置することで涙道を確保する方法です。しばらく経って傷が治った頃にチューブを抜くと、涙道が確保されたままになります。
実は、この手術は強い痛みをともないます。
「詰まり」が涙小管の入り口(涙点)にだけしかない場合、私はチューブを入れるのではなく、半導体レーザーで組織を熱凝固させる方法で、涙道を確保する治療をしています。この方法なら、ほとんど痛みもありません。切開や針の刺入だけでは傷口がすぐにふさがってしまいますが、レーザーによる熱凝固だとふさがらないのです。
涙目で化粧崩れしやすく、どこへ行っても「理由がわからない」「これは治らない」といわれていた多くの女性に「諦めかけていたのに、とてもよくなった」と喜ばれています。
悲しくないのに涙が出たら
●涙の不足を補う「涙液型」の目薬を試してみる。
●目薬で涙が止まらない場合、涙の質に問題があることが考えられるので眼科で目薬を処方してもらう。
*ドライアイ対策で涙が止まらないときは眼科で「涙道狭窄」でないかを検診