たかがしゃっくり、されどしゃっくり。鼻や喉への刺激で横隔神経と迷走神経を介して横隔膜のけいれんと喉周辺の収縮が生じ、不快感や、ひどいときは睡眠に支障が出る。
がん治療に使われる「シスプラチン」の副作用でしゃっくりが生じることがあり、これが地味に体力と気力を消耗する。しつこく続くときは、精神を安定させる薬や吐き気止めなどが処方される。
意外なところでは柿のへたを煎じた薬が有効だ。国立がん研究センター東病院では、柿のへた100gに対し400mLの水で200mLになるまで煎じた「柿蒂湯(していとう)」を1回あたり20mL処方するという。
ちなみに町の薬局でも漢方エキス剤の「柿蒂湯」が入手できる。効能・効果はズバリ「しゃっくり」なので、しつこい発作に悩まされている方は試してみるといい。
米国では、しゃっくりを止める「ストロー」が市販されている。
わざと抵抗を設けた短い変形ストローで、飲み物を吸い上げるには強い吸引力を必要とする。このとき肺を膨らませるために横隔神経が活性化され、横隔膜の筋肉が最大限に収縮する。
さらに、液体を吸い上げてすぐに飲み込む必要が生じ、喉周辺の筋肉を連動させる迷走神経も活性化される。しゃっくりを誘発する二つの神経系を同時に刺激することで同期を調整し、異常な動きが止まるわけだ。
がん患者も参加したボランティアによる使用調査では、アンケートに回答した249人(平均年齢30・9歳、女性126人)のうち92%が「(ストローで)しゃっくりが止まった」とし、満足度も高かった。
また、90%が「水を飲んだり、紙袋で口と鼻を覆って呼吸を繰り返すなどの民間療法よりも効果的だ」としている。確かに、いきなり「わっ」と驚かされるよりもはるかに良い方法だろう。副作用も報告されなかった。
米テキサス大学の研究グループは、医療機器としての承認を得るため、「偽ストローを対照とした厳格な比較試験を行いたい」としている。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)