「給料が1万2000円高い」より
「ランチ無料」が響く人

 この経験が現在の採用に活きていると思う。

 総合職、業務職、アルバイトを募集するとき、それぞれの価値観に合う募集広告をつくっている。

 一般的に求人広告を制作する人は総合職の人が多い。

 自分の価値観で募集広告をつくるから「キャリアアップできる」といったコピーを書く。

 しかし、アルバイトの中にはキャリアアップを求めていない人も多く、コピーに目が留まらない。

 通常、総合職募集時には「保険完備」というコピーは書かない。

 総合職の場合、保険完備は当たり前だからだ。

 だが、パート・アルバイト募集時には、「保険完備」が売りになる。

 パート・アルバイトなどの短時間労働者でも、法律上は条件を満たせば社会保険に加入することができるが、実際には加入していない人も多い。

 総合職、業務職、パート・アルバイトなど職種によって会社に求めるものは違う。

 そこで求人広告をつくるときには、福利厚生欄を職種によって変える。

 たとえば、総合職を募集する際は、「社長が直接教える研修制度」を目立たせる。

 すると、「一代で東証一部上場企業を創った当社社長が自ら講師となる一流のビジネスパーソンになるための『一流塾』」というコピーに興味を持った人、私から直接最新のウェブマーケティングを学びたい人が応募してくる。

 アルバイトを募集する際は、「勤務地が駅から近い」「ランチ無料」「保険完備」「残業なし」を目立たせる。

 特に「ランチ無料」は札幌でも話題になっている。

 東京都内ではランチ無料の会社は増えているが、地方ではまだまだ少ない。

 社員が知人に会社名を言ったら、「あのランチ無料の会社だね」と言われたという。

 新型コロナが流行する前はバイキング形式のランチだったが、コロナ禍で弁当にしている。

 生姜焼きやハンバーグなどの肉料理や、焼き魚やムニエルなどの魚料理の主菜と、野菜などの副菜もついているので、栄養バランスもいい。

 だから、お昼に「おいしくて温かいごはんが無料で食べられる」と社員に好評だ。

 ランチの原価は1食600円くらいなので、20営業日で月1万2000円ほど。

 給料が1万2000円高いより「ランチ無料」のほうが響く人もいる

 私は、倉庫のアルバイトで出会った人たちの生活実態や話を聞いて、いろいろな学びがあった。

 人の価値観は時代とともに変わっていくから、常に聞き取りが大切だ。

 だからこそ、総合職、業務職、パート・アルバイトの人に募集広告のキャッチコピーを見てもらい、どんなところに興味が湧くかをいつも聞いている。