コロナ禍でテレワークや「巣ごもり」によって自宅で過ごす時間が増えたことで、可処分時間を有意義に使おうと「独学」がブームになっている。
情報や技術が瞬く間にアップデートされ、既存の知識や常識があっという間に陳腐化して通用しなくなるいま、時代に取り残されないためには「独学」で最新の知識やスキルを習得することが必要不可欠だ。
しかし、 いざ独学をするとなると、どう進めればいいのか戸惑う方も多いだろう。SNSでも「やり方が見当もつかない」「何から始めればいいんだろう」などと、独学のノウハウに悩んでいる人たちの声が多数上がっている。
そこで、独学の指南書として必読なのが、MBAを取らずに独学で外資系コンサルになった「独学のスペシャリスト」の独立研究者・山口周氏が実践している、知識を使いこなす最強の知的生産メソッドを紹介した『知的戦闘力を高める 独学の技法』だ。
本稿では、いま独学がブームになっている詳しい背景と、『知的戦闘力を高める 独学の技法』で明かされている最強の独学システムについて解説する。(執筆・構成/根本隼)

独学する人としない人とでは、社会人として「雲泥の差」が出てしまう理由Photo:Adobe Stock

既存の知識がすぐ使いものにならなくなる時代

 ITなどの技術の急速な進歩によって社会や経済の環境が激しく変化し続け、先行きが不透明な「VUCA」の時代と呼ばれるいま、既存の知識や常識が通用しなくなるサイクルが速まっている。知識の陳腐化が瞬く間に起きるため、良質な知的生産を行なうには、自分がかつて学んだ知識やスキルを最新のものへと迅速にアップデートしなければならない。

 また、企業やビジネスが勢力を保持し、社会で重要な位置を占めていられる「旬の期間」は、以前より短くなった。いままで「安泰」と言われてきた業界や企業が、10年後も活況を呈しているかを予測することが難しくなったのだ。

 さらに、日本人の平均寿命は男女ともに増加傾向が続き、今後は現役として労働する期間が50~60年になるとも予測されていて、「人生100年時代」という言葉も生まれた。

豊かな人生を送るための武器として、独学が「ブーム」に

 このような時代的背景を受け、働く個人も状況に応じて、従来の「終身雇用型」とは異なるキャリアを築いていく必要に迫られている。

「新卒で入った会社で勤めあげ、定年になったら引退する」という、これまで当たり前とされていた直線的なキャリアのみを想定するのではなく、自分の専門領域にとどまらずに様々なキャリアへの道を独力で切り拓いていくべき時代になったのだ。

 そのため、不安定な時代を乗り切り、より豊かな人生を送るための武器として、独学や学び直しの重要性が非常に高まっている。そして、コロナ禍の影響で普及したテレワークが可処分時間の増加につながったことや、「巣ごもり」によって自宅で過ごす時間が増大したことで、独学の機運はますます盛り上がりを見せている

テレワーカーは可処分時間が年90時間増加

 野村総合研究所が今年2月に発表した調査結果によれば、テレワークによって通勤時間や外出先への移動時間が解消されたことで、自由に使える「可処分時間」はテレワーク利用者1人当たりで年90時間増え、特に120日以上テレワークを行なった人の場合は年180時間も増加した。

浮いた時間を自己研さんに使う人が増加

 この影響により、テレワーク利用者の4人に1人が仕事のための自己研さんにかける時間を増やし、また約半数が余暇にかける時間が長くなったという。浮いた時間を有効活用しようという意欲が高まっているといえよう。

 ニッセイ基礎研究所とクロスロケーションズが6月に発表した「オフィス出社率指数」によると、今年5月の東京都心のオフィス出社率は、コロナ前の昨年1~2月ごろと比べて約半分の52%にとどまっていた。感染対策や新しい働き方の一環として、テレワークが一定程度定着する可能性は高く、社会人が独学に取り組みやすい環境は引き続き維持されそうだ。