「職場にいる」が仕事をしているアピールにならなくなった

 テレワークの普及は、仕事面で独学の価値を高めてもいる。テレワーク導入により、「職場にいる」ことが仕事をしているアピールにならなくなり、目に見える成果や質の高いパフォーマンスがこれまで以上に必要とされるようになったからだ。

 仕事の質を上げるには、自分の持っている古い知識やスキルは絶えず償却する一方で、新しいものの考え方や視点を養い、発想力を磨いていかなければない。だからこそ、独学が極めて重要になるのだ。

独学する人としない人とでは雲泥の差に

 労働時間の長さではなく仕事の質がより評価される時代になり、可処分時間も増えたいま、空いた時間に漫然とスマホやTVを見て過ごしたり、自分の頭で考えずにネットの検索に頼ったりする人と、自由に使える時間を効率的に使って独学で自己研さんに励む人とでは、今後の成長に大きな差が出ることは間違いない。

独学の方法に戸惑う声は多い

 そこで気になるのが、独学を「どのように行なえばよいのか」だ。学校での学習とは違い、独学は自分でカリキュラムを作る必要があるため、学び方や進め方に戸惑う人も多い。SNSでも、独学に興味はあるものの「やり方が見当もつかない」「何から始めればいいんだろう」などと、独学の方法や手順に悩んでいる人たちの声が多数上がっている。

 そうしたなか、独学の指針を立てるのに役立つのが、MBAを取らずに独学で外資系コンサルになった「独学のスペシャリスト」の独立研究者・山口周氏の知的生産メソッドが明かされている『知的戦闘力を高める 独学の技法』(ダイヤモンド社刊)だ。

山口氏の独学システムとは?

 本書は、独学を①戦略②インプット③抽象化・構造化④ストック、という4つのモジュールから成る動的な「システム」として捉える。

「覚えること」を最終目標にせず、①テーマを立てて、②情報をいったんインプットし、③自分なりの視点で洞察や示唆といった「生きた知恵」へと変換し、それを④脳の外部情報としてストックすることで、必要に応じて臨機応変に知識をアウトプットできるようになるという。

 単なる「読書法」や「学習法」に終始するのではなく、独学の方針の立て方から最終的なアウトプットまでの一連の流れをシステムとして考え、各ステップの心構えや効果的な方法を伝授しているところに、本書のユニークさがある。この1冊があれば、独学の進め方に迷うことはないだろう。

「知っている」だけでは時代遅れ

 いまや、知識を手に入れて覚えるだけならば、インターネット上での検索によって無料で簡単にできるようになった。情報へのアクセス権がフリーになり、単に「知る」という行為が時代遅れになりつつあるいまだからこそ、独学を動的なシステムとして捉え、他者とは異なる目線で良質な知的生産を行なっていかなければならない、と山口氏は語っている。

 第2回以降の連載では、『知的戦闘力を高める 独学の技法』で紹介されている独学システムの4つのモジュールについて、さらに詳しく解説していく。

>>続編『勉強しているつもりが実は「バカ」になってしまう間違った読書法とは?』を読む