かつて猪瀬直樹氏が副知事や知事を務めていた時代、都は都営地下鉄と東京メトロの統合を目指していた。2013年1月には猪瀬知事が太田昭宏国土交通大臣に面会し、地下鉄一元化を実現するため、政府の保有する東京メトロ株を都に譲渡するよう迫っている。ただ、猪瀬氏の失脚により一元化問題は棚上げとなり、その後の舛添都政、小池都政では一元化の主張は後退した。

 都としては今後の臨海エリア、品川エリアの再開発に向けて、基幹となる交通手段の整備が担保できるなら東京メトロ株の保有にそれほどこだわる必要はなくなったということなのだろう。

東京メトロの完全民営化は
2030年代半ば以降か

 そんな構図が浮き彫りになったのが有楽町線延伸問題だ。有楽町線には豊洲駅から東西線東陽町駅、半蔵門線住吉駅を経由して常磐線亀有駅まで約14.7キロを延伸する構想が1970年代から存在し、営団地下鉄は1982年1月に同区間の免許申請を行っているが、政府の認可が下りず、整備が見送られてきた。

 民営化以降は、同区間について「輸送需要予測の減少など免許申請時とは事業環境が異なってきたことから、整備主体となることは極めて困難」との認識を示すとともに、「副都心線を最後として、今後は新線建設を行わない方針」を出したため、計画は宙に浮く形になってしまった。

 それでも強く整備を求めてきたのが、1972年の都電廃止以来、区内の南北軌道交通を失ったままの江東区だ。

 江東区は2007年から豊洲~住吉間約5.2キロに関する独自調査に着手し、2010年からは東京都や東京メトロなど関係機関を交えた検討会を開催。区などが出資する第3セクターが路線を整備し、東京メトロに運行を委託する「上下分離方式」での実現を目指してきた。