ブレインパッド社長 草野隆史
ブレインパッド社長 草野隆史(撮影:宇佐見利明)

 ウェブサイトでお気に入りの映画のDVDを購入すると、次にサイトを訪れた際に「お薦めの作品」がいくつも表示されていて、ついついまた買ってしまう、そんな経験はないだろうか。

 顧客の閲覧・購買履歴という膨大なデータを解析し、特定の一人の顧客に最適なコンテンツを表示する。ブレインパッドは、この「データマイニング」と呼ばれる技術を駆使して、顧客企業に効率的なマーケティングプランを提供し、業績を伸ばしている。2009年6月期は、前年比67%増の7億円の売り上げを見込んでいる。

 日本が「Japan as No.1」などともてはやされていた1980年代後半、社長の草野隆史は悩める高校生だった。周りにいるのはバブルに踊る格好悪いおとなばかり。「こんな国が世界でナンバーワンだとすれば、自分は何を目指せばいいのか」――。絶望的な気持ちだった。

 そんな気持ちのまま大学生になった草野に、希望と勇気を与えたのが、マイクロソフトのビル・ゲイツの存在だった。30代半ばにして、世の中にない価値を提示して世界を変える企業をつくり上げたビル・ゲイツの生き様は、草野に大きな衝撃を与えた。「世の中にない新しい価値を提案して広めたい」――。これが草野のベンチャー創業の原点となった。

 2000年、草野は起業に向けての第一歩を踏み出す。大学時代の友人らとともにネット関連のベンチャー企業設立に参画。その過程で、草野はあることに気づいた。

 ネットの普及による直販やダイレクトコミュニケーションの拡大で、企業内には、膨大なデータが蓄積されているのに、それが有効活用されていなかった。「データ量の増大にデータの分析能力が追いついていなかった」のだ。

 このギャップをデータマイニングによって埋めることで、企業の生産性を高めること。これこそ草野が探し求めていた「世の中にない新しい価値」だった。こうして04年、草野はブレインパッドを設立した。