新型コロナ拡大を機に日本でも急速に広まった「テレワーク」。多くのビジネスパーソンが、WEB会議やチャットツールの使い方など、個別のノウハウには習熟してきているように見えるが、置き去りにされたままなのが「テレワークのマネジメント」手法だ。これまでと違い、目の前にいない「見えない部下」を相手に、どのように育成し、管理し、評価していけばよいのだろうか? その解決策を示したのが、パーソル総合研究所による大規模な「テレワーク調査」のデータをもとに、経営層・管理職の豊富なコーチング経験を持つ同社執行役員の髙橋豊氏が執筆した『テレワーク時代のマネジメントの教科書』だ。
立教大学教授・中原淳氏も、「科学的データにもとづく、現場ですぐに使える貴重なノウハウ!」と絶賛する本書から、テレワーク下での具体的なマネジメント術を、解説していく。
仲の良い職場ほど、疎外感も感じさせる
テレワークを取り入れている企業でも、全員が完全テレワークの職場よりも、一部の人だけがテレワークをしている「まだらテレワーク」の職場のほうが、実際には多いのではないかと思います。
本書でも繰り返しお話している通り、プライベートでの交流が盛んな職場においてテレワーカーの評価不安は上昇し、そして、テレワーカーの比率が全体の2-3割である職場でこのような傾向が強く出ることがわかっています(上のグラフ参照。本書より抜粋)。ですから本来は全員テレワークに移行した方が、マネジメントはしやすいのですが、そうもいかない現実もあると思います。
「まだらテレワーク」の状態で、出社している人たちが以前のように食事に出かけるなど強い結束を保っている会社では、そこに加わっていない少数派である自分を“仲間はずれ”のように感じるのは自然なことです。この“仲間はずれ感”が高じて「自分は見てもらえていない」「公正に評価してもらっていない」という気持ちにつながることも十分にあり得るでしょう。
「なんとなく結束していた」チームは要注意
こうしたプライベートでの交流も盛んな仲の良い組織については、いまいちど考え直す必要があります。というのは、同じ場所で働いていることの利点を生かして仲の良さを保っているチームというのは、会わなくなったときにもろいのです。
とりわけ「何で仲良くなったのかわからない、毎日会って、毎日おしゃべりをして、気付いたらなんとなく結束していた」というチームは要注意です。
無意識のうちに関係性が成り立っているので、距離が離れたときに仲の良さを保つ方法を誰も知らず、崩壊するしかなくなってしまうのです。
経営理念を共有しているチームは強い
仲の良いチームでも強いのは、意識的に関係を築いた結果として仲良くなったチームです。なぜなら、彼らはチームビルディングの過程で必ずビジョン・ミッション・バリューなどの、いわゆる経営理念を共有しているため、働く場所が離れたくらいで関係性が大きく崩れることはないのです。
実際、経営理念を共有してさえいれば、テレワーカーは出社者よりも強く組織にコミットメントすることが明らかになっています。
本書では、テレワーク下での「チームビルディング」の方法を詳しくお話ししていますが、日本人は「阿吽の呼吸」に頼りすぎて、きちんと言葉にして共有するということをこれまで苦手としてきました。そこを改めて改善することで、こうした「まだらテレワーク」の問題も解決できるはずです。