国として働き方と生活のコンセプトを
変えるビジョンが欲しい

 この諮問委員会は、何年もかけて意見を擦り合わせて煮詰まった話として、資金の調整も含めて発表されたのだろう。

 しかし、時間をかけると発表のタイミングで今回のようにコロナでさまざまな状況の変化が起きたりする。リーマンショックの直後でも同じだったかもしれない。景気や働き方に関係なく、こうした長期計画の話は短期的な情勢に左右されているようでは困るが、それにしてもタイミングが悪過ぎる。

 このニュースに私が反応してしまうのも、このタイミングの悪さにある。日本が直面している重要な論点は、少子高齢化で労働力となる人口が減少する中で生産性を向上すること、デフレを払拭し心地よいインフレを実現すること、地球環境が悪化する中で省エネをはじめとして環境を維持するスタイルを確立することだ。

「働き方改革」はまさにこの労働力不足解消のために始まったものだ。だからこそ、マイナー路線に限られた予算を割り振るのではなく、いつでもどこでも働ける環境を整え、社会を結果主義的な考え方にマインドシフトするきっかけにしていった方が目標現実に近づくように思う。

 コロナ禍で図らずも働き方改革は進行し、多くの人がこれに慣れた。災い転じて福となすには、こうした国の置かれた状況から国の目指すべき道を明確に示すコンセプトを考え直す時期になっているように思う。

 幸いにも、予算は確定してはいないし、この延伸計画の実現には10年以上かかる。考え直すにはいいタイミングである。