妻の浮気が原因で離婚。突如、5歳の息子との父子家庭になった。手元に残された全財産は90万円。定時退社で保育園へ息子を迎えに行く毎日で、残業代ゼロ。年収400万円で、カツカツの生活だった。ギリギリの節約生活で、4年で1000万円を貯め、本格的に株式投資を開始。紆余曲折を経ながらも某企業の大株主になり、資産2億円以上を築いた。その投資術を初公開。いま息子へお金と投資の話を伝授する『どん底サラリーマンが株式投資で2億円』

サラリーマン 投資Photo: Adobe Stock

ストーリーを描いてから買い
崩れたら迷わず売る

機関投資家は、決算短信のような定量データをAI(人工知能)が瞬時に解析して投資しているそうだ。

しかし、経営陣のインタビューや株主総会でのプレゼン、質疑応答といった定性データは、さすがのAIもまだ完全には解析できないだろう。

定性データは結局、人間しか解釈できない。その点に個人投資家が機関投資家に勝てる余地がある。

これに加えて重要なのは、自分の頭でストーリーを組み立てられるかどうか。

ここでいうストーリーとは、投資する銘柄の株価が上がるシナリオのようなものだ。

たとえば、コロナ禍で都心のオフィス需要が縮小して、不動産デベロッパーの業績と株価が低迷している半面、在宅勤務の広がりでリモートワークに必要なハードやソフトをつくっている会社の業績と株価は上昇していた。

ワクチンや抗体の開発が成功して、新型コロナが普通の風邪みたいになったとしても、リモートワーク化の潮流は変わらないだろうというシナリオが描けたとしたら、リモートワーク関連のセクターで財務基盤が盤石なバリュー株への投資を検討する。

ストーリーが思い描けないのに、定量データの数字だけに頼って投資しないほうがいい。

なぜなら、株価が大きく上下したときに、買い増しするべきなのか、それとも売るべきなのかが判断できないからだ。

自分の頭でストーリーを組み立てて投資をしていたら、そのストーリーが崩れたときには迷わず売却するべきだ。たとえ「ほっとけ投資」の銘柄でも、ストーリーが完全に崩壊しているにもかかわらず、頑固に持ち続ける必要はない。

息子には「何を買ったらいい?」と訊かれても、「自分で考えてみなさい」と突き放している。

では、ストーリーを組み立てて株式投資に活かすには、どうしたらいいのか?

自分が実践してきたのは、「社内でその事業の担当者になったら、どのようなビジネスモデルをつくって展開するか?」というシミュレーションをすることだった。

細かく見ると会社という組織は異業種のスペシャリストの集まりのようなもの。

部門ごとにまるで違う仕事をしている。人事異動で異なる業務を体験しながら、スペシャリストでありながらジェネラリストにもなれるのが、サラリーマン投資家の特権の1つ。

それはストーリーの構築能力を確実に高めてくれる。

リモートワーク関連銘柄への投資を考えているなら、自分が会社のリモートワーク担当者に任命されたとイメージしてみよう。

本当の仕事だったら、会社のプラスになるには、どうすればいいかを必死に考えるだろう。

同じくらいの真剣度で、その銘柄の事業の先行きがどうなるかをストーリー立ててみるのだ。

たとえばサイボウズ株を買った当時は、1999年にNTTドコモが始めた世界初の携帯電話向けネットサービス「iモード」が出たばかりだった。

いまではサブスクリプション(定額課金)やクラウドのサービスが脚光を浴びているが、当時はiモードによってグループウェアが使えるようになれば、サイボウズのユーザーが20%くらいは増加するだろうとストーリーを描いた。

こうしたシミュレーションがリアルにできるのは、サラリーマン投資家のアドバンテージの1つだと思う。