しかし、近年のASEANの経済成長、域内貿易の拡大を背景に、今後は東南アジアへの工場移転が進むと考えられます。安価な製品をアメリカ合衆国に輸出していた中国とアメリカ合衆国との関係を考えると、日本企業への影響も小さくないでしょう。

 EUとの貿易統計も見てみましょう。日本はEUから、「医薬品」や「自動車」、「有機化合物」、「科学光学機器」といった比較的高価なものを輸入しています。

 一方で、日本とEUはともに「自動車」の輸出が行われています。先進国の輸出統計は「1位機械類、2位自動車」となっていることが多く、先進国同士による自動車の輸出入が盛んです。

日本が生き残るには?

 日本の貿易は、原材料を輸入して、製品に加工して輸出する加工貿易を基本としています。高度経済成長期の日本は、それまでの繊維製品を中心とした輸出から、鉄鋼や船舶などの輸出が伸びました。

 当時の日本は、鉄鋼業や造船業、アルミニウム工業などが主力産業でした。高度経済成長期が終わり、安定成長期になると、自動車や精密機械などの輸出が伸びました。

 特に自動車は、1980年代になってアメリカ合衆国と貿易摩擦が起こるようになり、1985年にはプラザ合意が結ばれます。しかし、プラザ合意による円高の進行は輸出不振を招き、海外での現地生産がみられるようになっていきました。

 こうして製造品出荷額や就業機会の減少、いわゆる「産業の空洞化」が顕在化していきます。かつての日本はアメリカ合衆国との貿易額の比重が大きかったのですが、2000年以降は中国をはじめとするアジア各国との結びつきが強まっていきました。

 現在日本は部品を輸出して、海外で生産した完成品を輸入するようになり、加工貿易の性格は弱まっています。国際分業体制が確立していくと、日本企業は製造部門を海外へ移し、国内では研究開発部門の充実を図るようになっています。

 そのため、ますます部品やサービスの輸出に力を入れることとなり、さらなる技術水準の向上を目指す必要が出てきます。

(本原稿は、書籍『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)