ホリエモンこと堀江貴文の大ヒット作『ゼロ』──50万部を突破し8年間売れ続けるこのベスト&ロングセラーが、ついにマンガ化された。
自由に生きることの楽しさ、夢の実現に向けて仲間とともに働くことの素晴らしさを分かりやすく描いた『マンガ版 ゼロ』は、仕事や人生に悩み、今の自分を変えたいと願うすべての人のバイブルだ。
「やりたいことは、ぜんぶやれ!」「すべてはノリのよさから生まれる」「とにかくハマれ!」など過激ながら本質的なメッセージ満載の同書から、今回は「働く理由」を堀江が本音で語った部分を紹介する。(連載の過去記事はこちらから)

なぜ、堀江貴文はこんなにも働き続けるのか?

すべてを失った僕

 僕が逮捕されたのは2006年のことだ。早いものでもう15年経つ。となれば、若い読者のなかには、当時の僕についてご存じない方もいるかもしれない。

 学生時代に起業した会社「オン・ザ・エッヂ」(のちのライブドア)を2000年に上場させた僕は、04年のプロ野球球団の買収提案、05年のニッポン放送敵対的買収などで新時代の経営者として世の中を大いに賑わせた。特にニッポン放送株をめぐるフジテレビとのバトルは、日本中を巻き込むほどの大騒動となった。

「想定内・想定外」という言葉で流行語大賞をもらい、衆議院選挙に出馬したのもその頃だ。当時は連日メディアに取り上げられ、時代の寵児としてもてはやされた。

なぜ、堀江貴文はこんなにも働き続けるのか?

 僕のことを毛嫌いする中高年層は多かったと思う。生意気だとか、拝金主義者だとかさまざまな批判を浴びたものだ。しかし、批判と同じかそれ以上に、若い世代の支持を得ていた実感もあった。

 ところが、まさに青天の霹靂(へきれき)。06年1月に僕は証券取引法(当時)違反の容疑で逮捕される。その後、無実を訴え5年以上におよぶ法廷闘争を繰り広げたが、結果的に懲役2年6ヵ月の実刑判決を受けることになる。

 長野刑務所に収監された僕は、13年3月27日に刑期を7ヵ月残して仮釈放された。『マンガ版 ゼロ』の原作となった『ゼロ』という本は、その直後に企画がスタートしている。まさに、すべてを失った僕がゼロからの新たな一歩を踏み出すために出版した本なのだ。

差し入れしてほしいものは「仕事」

 刑期を終えた僕が、出所したら真っ先にやりたいと思っていたこと。それは、次のひと言に尽きる。

「働きたい」。

 そう、僕は働きたかった。とにかく僕は働きたかったのだ。

なぜ、堀江貴文はこんなにも働き続けるのか?

 ライブドアの経営者時代はもちろん、出所してから現在に至るまでも、僕は分刻みのスケジュールで働いている。刑務所にいたときでさえ同様だ。面会にきてくださった方に「なにか差し入れしてほしいものはある?」と聞かれ、思わず「仕事!」と即答して呆れられたほどである。

 いったいなぜ、僕はそこまで働き続けるのだろう?

 働く理由なんて、深く考えたことはなかった。「働くなんて当たり前」。説明するまでもないことだし、説明している時間さえもったいない。シンプルにそう片づけてきた。

 しかし、東京拘置所での厳しい取り調べと孤独感で精神的にギリギリまで追い詰められていたとき、刑務官の方の優しさに触れたことをきっかけに、僕は自分が「働く」ことの理由に気づいたのだ。

 隠すことでもないだろう。僕は無類の寂しがり屋だ。

 ときおり「ひとりになれる時間が必要だ」とか「誰にも邪魔されない時間を持とう」といった話を耳にする。けれど僕にはこの言説が、まったく理解できない。これまでの人生で、「ひとりになりたい」と思ったことがないからだ。できれば朝から晩まで誰かと一緒にいたい。たとえそれがスマートフォンやソーシャルメディア経由であっても、誰かとつながっていたい。

 思えば僕は、ずっと前から知っていた。

 働いていれば、ひとりにならずにすむ。

 働いていれば、誰かとつながり、社会とつながることができる。

 そして働いていれば、自分が生きていることを実感し、人としての尊厳を取り戻すことができるのだと。

 だからこそ、僕の願いは「働きたい」だったのだ。

(次回に続く。※この記事は、『マンガ版 ゼロ』からの抜粋です。)

堀江貴文(ほりえ・たかふみ)
なぜ、堀江貴文はこんなにも働き続けるのか?

1972年福岡県八女市生まれ。実業家。(株)ライブドア元代表取締役CEO。SNS media&consulting(株)ファウンダー。東京大学在学中の96年にオン・ザ・エッヂ(後のライブドア)を起業。2000年、東証マザーズ上場。04年以降、近鉄バファローズやニッポン放送の買収、衆議院総選挙への立候補などで既得権益と戦う姿が若者から支持を集め時代の寵児に。しかし06年1月に証券取引法違反容疑で逮捕され法廷闘争の末に実刑判決を受ける。11年6月に収監され長野刑務所にて服役。本書の原作『ゼロ』刊行直後の13年11月に刑期を終了し、ふたたび「ゼロ」からの新たなスタートを切った。現在は宇宙ロケット開発、アプリ開発、オンラインサロン運営などで幅広く活躍。