名門進学は住宅を買える世帯に有利

 経済の発展と教育熱の高まりの連動は世界でも共通する現象だが、中国では受験戦争が住宅価格にも影響した。

 中国では、有名公立校がある学区域の住宅が異常な値上がりを示す事例が数多く報告されている。自宅から近い学校に入学するという学区制が敷かれているため、有名公立校に入学するには、「学区房(房は住宅の意味)」と呼ばれる住宅地に住民票がなければならない。日本でなら賃貸マンションを借りてつじつまを合わせるケースもあるが、中国では学区域の物件所有者になる必要があるため、我が子にいい教育を受けさせたいという親はみな、競ってこの学区房を買い求めようとするのだ。

 上海には上海静安区教育学院附属学校という有名公立校があり、ここに通うには「海防村」または「蒋家巷」に住民票を置く必要がある。海防村の集合住宅は築20年超と老朽化が進んでいるが、今年1月、48平方メートルの一室が810万元(約1億3527万円、1元=16.7円)の価格で売却された。1平方メートルあたりの単価にすれば16.8万元(約280万円)である。

 筆者は2018年5月にも同じ広さの住宅価格を調べたことがあるが、当時は700万元(約1億1690万円、1元=16.7円)で成約していた。老朽住宅に1億円を上回る価格というだけでも驚きだが、コロナ禍を経てもなお15%も価格が上昇しているのにはさらに驚かされる。

 常に高い需要を持つ「学区房」は底堅い投資先であることから、投機の対象にもなっているようだ。中国では「住宅バブルの源にはこの学区房がある」と信じられているが、住宅価格を押し上げる原動力には親たちの学歴偏重の教育熱がある。

 ちなみに2018年当時、筆者の取材に協力してくれた上海の静安区の住人は、「知人は子どもが生まれるとすぐに海防村の住宅を購入した」と話していた。中国の場合、人気校への入学も「住宅購入」が物を言う。