例えば、有料だった道路が無料で通行できるようになると、その道を使おうとするドライバーは多い。早く目的地につける上にタダで走れるなら、その判断は正しいだろう。実は先日、筆者はこの経験をしたのだが、こうなるとそれまで多くの車が行き交っていた一般道路は、逆に交通量が激減することになる。その道路沿いにあった店に客が立ち寄ることが減り、結局、元有料道路沿いのパーキングにある店のほうに人が集まる。無料にしたことで、高速道路の関連会社だけがもうかる構造なのではないか…と内心思った。

 同様に、無料セミナー、無料相談、無料宿泊…これら無料のサービスは、この先にもっとお金を払ってもらうために人をかき集める方法であることは言うまでもない。

そもそも無料で受けられるサービスはおトクなのか

 最後に、別の角度からも触れておこう。

 ライフプランの相談などを受けているファイナンシャルプランナーから聞く話だが、無料相談に来る人より、有料相談を選ぶ人のほうが家計の見直しに真剣だと感じるという。お金を払った以上、元を取りたい、結果を出したい心理が前向きに働くからではないだろうか。

 相談を受ける側の専門家もそうだ。無料相談にもいろいろあるので一概にはいえないが、大ベテランで実績の高い専門家が無料相談の相手になってくれることはほぼないだろう。どんな仕事でも、能力が高い人ほど報酬も高いのが通例だ。もし、あなたが無料で自分の能力を提供してくれと言われたら、“無料なり”にしか取り組む気にはなれないのではないか。ものすごく質が高いサービスを100%無料で受けられることはまずないだろうし、本当のプロならそのオファーは受けないだろう。

 信頼できて質の高いサービスを受けたいのなら、やはり利用者は相応の対価を払うべきなのだ。無料は魅力的でみんな大好きだが、必ずしもベストな選択とはいえない。