炎症性の腸疾患と食事、超加工食より植物性食品をPhoto:PIXTA

 潰瘍性大腸炎やクローン病に代表される炎症性腸疾患(IBD)は、自己免疫疾患の一つで下痢や腹痛、血便などが生じる。欧米に多い病気だが、今世紀に入りアジア諸国で増加中だ。

 以前から食習慣との関連が指摘されており、近年は一歩進んで抗炎症に働く腸内細菌叢を養う食事療法が注目されている。

 オランダの研究グループは、同国在住のIBD患者331人と、過敏性腸症候群の223人を含む一般人1094人の糞便(腸内細菌が含まれている)を採取し、腸内細菌の種類を特定。対象者の食事パターンと腸内細菌の種類との関係を調べた。

 その結果、抗炎症作用を持つ2種類の「善玉菌」は、果物や赤ワイン、魚、植物性タンパク質、チーズの摂取に従って増える一方、加糖飲料やスイーツ、脂質、動物性タンパク質の摂取によって減少することが示された。

 一方、腸管の粘膜を壊す「悪玉菌」は動物性タンパク質の摂取で増加。さらに脂質の多いファストフード(フライドポテトや肉、マヨネーズなど)や加糖飲料が増えるに従って腸の炎症を表す検査値が悪化することもわかった。

 加糖飲料などの「超」加工食については、世界21カ国が参加する「PURE」試験でもリスクが指摘されている。約11万6000人が参加した調査で、中央値9・7年の追跡期間中に467人がIBDを発症した。

 食生活との関係では、超加工食(市販の焼き菓子やスナック、加糖飲料、添加物入りの調理済み食品)を食べる回数が増えるほど、IBDの発症率が上昇。たとえば超加工食を口にする機会が1日1食未満と比べ、1日5食以上ではIBDリスクが82%、1日1~4食でも67%上昇していた。

 その一方、肉の脂身、赤身肉、乳製品、野菜や果物、豆類との関係は認められなかった。研究者は「食材そのものより、加工プロセスにリスクがある」と推測する。

 工場直送の超加工食がリスクという点で、IBDはある種の「先進国病」だ。発症・悪化予防には畑や農場から直送される昔ながらの食材を増やそう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)