この際には、複数ある選択肢から、どれを選ぶかの判断基準を決める必要がある。これには、会社の経営理念との整合性をチェックするといった原則レベルの基準とそのときのビジネスの状況にフィットした指標レベルの基準の2種類がある。そして最終的には、選択肢の中から、原則にマッチし、かつ指標による基準にもっとも適合すると考えられるものが選択される。

 この目標設定と内外認識と選択肢や判断基準は、相互に影響し合い変化するが、的確なタイミングを見計らって、適切に意思決定する必要がある。

 このとき、朝令暮改の肯定派の人たちは、以下のような主張をする。外部環境も内部状況も刻々と変化する時代。新しい技術には即応しなければならないし、マネジメント方法も変えなくてはならない。そのため、昨日までは最良だった選択肢が劣位になることもあるだろう。判断基準すら変わってもおかしくはない。調達金利が上がれば求めるROIも当然上げなければならないし、他業態から競合が参入してくれば、当面の利益を度外視してでも、マーケットシェアを死守することが第一優先事項になるということも起こりうる。朝令暮改をいとわずに積極的に変化対応をすべきである。状況が変わったのに前の基準にしたがって決定した選択肢を継続していることのほうがリスクであると。

 一方、朝令暮改の否定派は、場合によっては朝令暮改が必要なことも認めるが、組織としての総合力を発揮するには、組織の構成員全体のやる気を維持し、それぞれの行動の整合性の確保が必要であると考えている。それぞれが持ち場で各自の目標の達成のために努力をしている。その途中でこれまでと異なる指示が出されれば、準備は無駄になり、行動の調整はつかなくなり、あてがわれた目標も未達成となり、評価もまともにできない。

 これが続くと、真面目に準備をしようともしなくなり(どうせ変わるから)、成果も出さなくなり(どうせ評価されないから)、高いレベルの組織的な活動が失われてしまう(どうせ調整できないから)というのである。

 どちらも正しい。ただし、現在は本当に激しい変化の時代になり、大企業でも素早い対応をせざるをえない時代になってきている。適度な朝令暮改は必要という見解が優勢になりつつある。