中国共産党の管理下に
おかれるビッグデータ

 それに加えて、独禁法などを根拠とするディディへの調査は、共産党政権がこれまで以上にビッグデータの管理強化を重視していることを意味する。9月1日には中国で「データ安全法」が施行される。企業はこれまで以上にデータの収集、保存などに関する法的責任を負う。端的に言えば、習政権は、中国経済を支えるヒト、モノ、カネ、そしてビッグデータを強い管理下におき、経済と社会への統制を強化しようとしている。

 その証拠に、中国当局は複数のIT先端企業への締め付けを強めている。採用マッチングアプリの「BOSS直聘(ボス・ジピン)」を運営する看准や、トラック配車サービスの満幇集団(フル・トラック・アライアンス)も当局の審査対象になった。

 さらに、中国の医療スタートアップ企業であるリンクドック・テクノロジーや、フィットネスアプリを手掛けるKeepは米国上場計画を棚上げした。いずれにも共通することは、中国企業の事業運営は共産党政権のさじ加減次第だということだ。同じことは、学習塾を運営する企業への規制強化にも当てはまる。

 本来、中国企業にとって米国への株式上場は、ソフトウエア開発力の獲得、国際的なブランド認知度の向上、優秀な人材の獲得などに重要な手段の一つだ。しかし、それは共産党政権にとって自国データの対米流出要因になり得るし、安全保障にも関わる。IT先端分野をはじめ中国企業の資金調達や事業運営への締め付けは強まる可能性が高い。そうしたリスクの高まりに対応するために、米証券取引委員会(SEC)は中国企業によるIPO手続きを一時停止したと報じられている。