国立競技場Photo by Satoru Okada

新型コロナウイルス「デルタ株」の感染爆発の下で行われた東京オリンピックが8日、閉幕した。ゼネコン各社は、無観客による経済損失とは無関係に、五輪の競技施設や、五輪に合わせた東京都心の再開発案件で好業績を上げてきた。これからは再開発の“タマ”は減るが、実は五輪関連のある再開発案件が残されていた。(大手ゼネコン勤務 建山堀男)

清水建設が今期第1四半期で大幅減益
復興需要が一巡、再開発は低採算…

 純利益66%減――。スーパーゼネコンの一角である清水建設が7月30日発表した2022年3月期第1四半期決算は、営業利益が前年同期比81.2%減の25億円、純利益は同66.3%減の27億円に沈みました。

 もっとも、清水はこの期の売上高は同0.8%増であり、これから工事を手掛けると契約した金額である受注高(単体、開発事業等を除く)で見ると、むしろ22.5%増えています。

 鹿島、大成建設、大林組も連結売上高は微増でありながら、営業利益、純利益がと共に減少しており、大成も営業利益が8割減。建築、土木の両事業で粗利率が大幅に下がったことが影響したようです。2010年台半ばから「我が世の春」を謳歌してきたゼネコン業界は、これから冬の時代に入ってしまうのでしょうか。 

 日本経済新聞電子版によると、清水の大幅減益の原因は、前年の物件売却の反動、本社ビル内での新型コロナ対策に加え、採算の良い東日本大震災の復興関連事業が一巡した半面、逆に採算の悪い東京都心の再開発案件の工事が進んでいることが挙げられています。

 ただ、上場ゼネコンの決算は「工事進行基準」(工事の進捗に応じて四半期ごとに売り上げや利益を計上する方式)が採用されるため、第1四半期、第2四半期と不採算な工事が続いて赤字決算でも、第3四半期に工事の完成が近づき、設計変更などで追加の収入があると、一気に黒字になるケースも珍しくもなく、四半期ごとの収支に必要以上にとらわれる必要はありません。

 とはいえ、コロナ対策は本社ビル内だけでなく建設現場でも必要で、作業効率を悪化させていることは否めません。利幅の大きい震災復興工事が一巡したことも、今後のゼネコンの収益を考えればマイナスです。

 さて世の中を見渡せば、コロナの感染爆発は極めて深刻で、医療崩壊の様相を呈しています。8日まで続いた東京オリンピックは、日本人選手の金メダルラッシュで、テレビの中では盛り上がりを見せていましたが、どれだけの人が心の底から喜びを分かち合えたでしょうか。

 また、ほぼ無観客となったことで、五輪の経済効果が1300億円減少したとの試算がありますが、「五輪で大儲けしてきた」と世間で散々指摘されてきたわれわれゼネコン業界は、何か影響はあるのでしょうか?