66歳以降、Dさん一家は働かず
温泉地でのんびり老後を過ごしても大丈夫?

 さて、日本一周から戻る頃にはDさんは66歳になっています。相談文によると、老後は温泉地でのんびりしながら趣味の登山や釣りをして過ごしたいとのこと。これが可能かどうかを確かめていきましょう。

 Dさんが66歳のときに奥さまは60歳です。日本一周に行くためにDさんは65歳時点で仕事を完全にリタイアするとします。同時に奥さまも仕事を辞めて以後も働かないとすれば、Dさんが66歳から71歳までの5年間、ご夫婦の収入はDさんの年金収入のみになります。

 一方、支出は中身が変わります。現在の住まいを売却して温泉地に移住するとすれば、まず住宅の管理費+駐車場代の2万7000円が無くなります。仕事を完全リタイアしているので、仕事のための資格維持は不要と考えると、教育費8000円も無くなります。またドライブが趣味とのことでしたが、温泉地でのんびりと過ごす中で今までよりも自動車に乗る機会が減るのであれば、自動車の費用10万円も減少すると考えられます。

 自動車の費用は半減の5万円とすれば、毎月の支出は上記の合計で8万5000円減、年間で102万円の減額になるでしょう。

 Dさん一家の現在の年間支出額は406万円ですから、66歳以降は102万円減額の304万円になります。ご夫婦の年金額の記載がありませんが、55歳までDさんが働いたことなどから推測すると、ご夫婦で年間200万円前後の公的年金を受け取れると思います。

 年金受給額をDさん130万円、奥さま70万円としましょう。ただ、奥さまが年金を受け取るまでにはあと5年あります。その間、収入は130万円、支出は304万円になるので年間の赤字額は174万円です。

 つまり、174万円×5年間=870万円が金融資産から取り崩されることになります。Dさんが66歳時点の金融資産額6930万円からこの870万円を差し引くと、71歳時点の金融資産額は6060万円になります。

 Dさんが71歳になる時点で奥さまの年金も収入に加わることから、それ以降の年間収入は200万円。支出は変わらず304万円とすれば、年間赤字額は104万円です。

 Dさんが71歳時点の金融資産額は6060万円で、その金額を年間の赤字額104万円で割ると、58年強は金融資産を取り崩しつつ生活することが可能となります。簡易な試算ですが、65歳で仕事を辞めた後にマイカーで日本一周の夢を実現し、66歳以後は温泉地で趣味の登山、釣りをしながらのんびりした老後を過ごすことは、無理なくできるといえるでしょう。試算より少々支出額をアップしても希望をかなえることは可能だと思います。

 最後に温泉地のマンション購入について一言。既に物件を探しているとのことですが、温泉地のマンションは中古物件だと修繕費などが高額になるケースがあるようです。また、温泉付きのマンションだと管理費などの毎月のランニングコストがばかにならない額になるケースもあるとのこと。

 物件を探す際には、マンションであれば物件の利便性や資産価値などのほか、修繕費がきちっと確保されているのかという点と、管理費や共益費など毎月のランニングコストもしっかりと確認するとよいでしょう。Dさんの老後プランに資金面での不安はありません。それでもやはり、無駄なコスト負担はなるべく発生させないようにすることこそが心穏やかに豊かな老後を過ごす秘訣だと思います。

(ファイナンシャルプランナー 深野康彦)