加藤紀子(以下、加藤) ゲームから、ほかのことに展開していけると、すごくいいですよね。好きなことが増えれば増えるほど、結果的にゲームの時間は減ることになりますし。

「ゲーム終了!」と叱ってもなかなかやめない子に効く“3大スゴ技”加藤紀子(Noriko Kato)
1973年京都市出まれ。1996年東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、国際バカロレア、教育分野を中心に「NewsPicks」「プレジデントFamily」「ReseMom(リセマム)」「ダイヤモンド・オンライン」などさまざまなメディアで旺盛な取材、執筆を続けている。一男一女の母。膨大な資料と取材から「いま一番子どものためになること」をまとめた『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』が17万部を超える大きな話題となっている。
「ゲーム終了!」と叱ってもなかなかやめない子に効く“3大スゴ技”小川晶子(Akiko Ogawa)
ブックライター、絵本講師
幼い頃から絵本が好きで、幼稚園生の頃の趣味は絵本作り。本と表現に関わる仕事をしたいと、2008年よりフリーのライターになる。『文章上達トレーニング45』(同文館出版)、『プロフィール作成術』(kindle)などの著作を持ち、『読書する人だけがたどりつける場所』(齋藤孝著、SB新書)などベストセラーの制作にも関わる。最新刊『すごい人ほどぶっとんでいた! オタク偉人伝』が注目を集めている。メディア出演、講演実績多数。2人の男の子の母親でもある。SNSでも日々発信中!
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その1:ゲームを「コミュニケーション」の道具にする

加藤 講演会などでも最近必ず聞かれるのが「ゲーム対策」です。悩んでいる親御さんは多いですね。

『子育てベスト100』を書くにあたっては、ゲームと教育に詳しい東京大学大学院情報学環の藤本徹准教授に詳しく話を聞かせていただいたのですが、ここでもいくつか紹介させていただきます。

「ゲーム対策」のワザの1つ目は、まず、「ゲームをコミュニケーションの道具にする」こと。

 ゲームにハマっている子には「どういうところが面白いの?」と聞いて、ゲームについて教えてもらうことです。親も一緒にゲームを楽しむとさらにいいでしょう。

 ゲームを取り上げようとするのが一番よくありません。ゲームをめぐって険悪になるより、むしろ意思の疎通に生かすんです。

 先日も、子育ての取材である東大生が、「子どものころ、休みの日にお父さんと一緒にゲームができたのが嬉しかった」と言っていました。

 親子で一緒にゲームを楽しむと、「じゃあ、そろそろ終了にしようか」ってお互いに納得のいくところで終えられるので、とても平和的なんですね。単に時間で区切って「タイマーが鳴ったから、ハイ終了!」と強制的に終わらせようとすると、遊んでいるほうはつらい。

小川 そうですよね。「まだもうちょっと!」「いつまで遊んでいるの!」とバトルになってしまう……。普段から一緒に遊んでいれば、終わりどころもわかりそうです。

その2:ゲームを「味方」にする

加藤 2つ目は、「ゲームを味方にする」。

 ゲームを悪いものだと思い込んでいると、イヤな部分ばかりが目に付くかもしれませんが、ゲームにはプラスの面もあります。マインクラフトもそうですが、ヒットしているゲームは細部まで丁寧につくりこまれてるんですよね。

 RPGにしても、主体性や計画性など非認知スキルが磨けるとも考えられるし、ゲームをきっかけに伸ばせるところはいろいろとあるんです。「このゲームは、こんないいところがあるじゃん」と思えば、親もおおらかになれます。

 反対に、ガミガミ言って禁止でもすると、むしろ「もっとやりたい」という欲求をあおってしまう。

小川 親が「ゲームはよくないもの」と決めつけて、「早くやめなさい」ばかり言っていると、子どもは余計に隠れてやろうとしますよね。

加藤 『子育てベスト100』では「カリギュラ効果」という心理現象を紹介しています。ダメと禁止されるとかえって興味が高まって、逆の行動に走りたくなるんです。そこで、藤本准教授は「○○のあとならやってもいいよ」という声のかけ方を勧めています。

「むしろ『宿題や家の手伝いをきちんとやった後でなら、気がすむまでゲームで遊んでいいよ』といったルールにするほうが、自分でゲームとの付き合い方を工夫するような望ましい行動をうながすことができる」と藤本准教授は言っています。

その3:ゲームから「他のジャンル」に展開していく

加藤 そして3つ目は、最初に小川さんが言ってくださったように、「ゲームから他のジャンルに展開していく」ことです。

 歴史ゲームをきっかけに歴史好きになり、小説を読んだり大河ドラマを見たり、お城好きになってお城を見てまわるようになったという子も実際にいます。また、ゲームをつくる側に興味を持ち、映像づくりやプログラミングを始めた子もいます。そうなると、ゲーム以外のことにも忙しくなりますよね。

 親は子どもが何に惹かれているのかを観察して、本やマンガを紹介してあげたり、ゆかりの場所に連れ出してあげたり、パソコンを使わせてあげたり、興味を広げるきっかけをつくってあげられるといいと思います。

日常も「ゲーム化」してしまう

小川 ゲームにハマッて宿題をやらないとか、集中すべきことに集中できないという場合は、どうしたらいいでしょうか?

加藤 ゲーム好きな子には、日常生活もゲームのように考えさせるのも1つの手です。

 たとえば「時間までに宿題を終わらせる」というゲームにしたり、「早く遊びたいけど、宿題がこんなにある」というとき、「じゃあ、この状況をどうやって攻略する?」とゲームのように攻略法を考えさせたり。

 さきにも触れた取材では、別のRPG好きの東大生が面白いことを言っていました。

 受験勉強を頑張っているのに偏差値が上がらなかったときは、RPGでなかなかクリアできないときのことを思い出し、「こんなことはゲームで慣れている。なかなか進めないときも経験値は上がっているから必ずレベルアップする」と思えたのだとか。

小川 面白いですね。今日のお話で、ゲームについてかなりポジティブに考えられるようになりました。

 今日は貴重なお話をたくさん聞かせていただき、どうもありがとうございました。

加藤 こちらこそ、ありがとうございました。