今後、中国では店舗数の拡大を計画しています。新たなエリアとして重慶に進出することも決まりました。国際的なメディアからは、中国で最も成功している外資系企業、という表現をいただいたこともあります。
中国での展開は、イトーヨーカ堂にとって、初めての海外進出でした。1996年4月、外国資本の企業として初めて中国政府から全国店舗展開を認められ、中国企業と合弁で現地法人を設立しました。北京1号店が誕生したのは、その2年後、1998年4月のことです。成都店は、成都市からの要請に基づき、北京よりも一足早く1997年11月にオープンしました。
この初めての海外展開に際して、責任者となったのが、私でした。当時、専務取締役営業本部長として2万5000人を率いていた私は、1996年5月、初代中国室長を命ぜられました。ひとりも部下のいない中、単身で中国に出張に行くところから、私の仕事は始まりました。
政府認可も株式上場も中国では信用の証にならず苦戦
今でこそ日本の店舗に匹敵するどころか、それ以上の成果を上げている中国のイトーヨーカ堂ですが、開業から数年は本当に苦しい状況が続きました。何より初めての海外出店。しかも中国について、何ひとつわからないところからのスタートです。中国とはどういうところなのか、どんなお店を作ればいいのか。10人の日本人赴任者で、ゼロからの手探り状態での準備から始まりました。
それは、苦難の連続でした。
イトーヨーカ堂は、日本ではそれなりに名前が知られています。株式市場(東京証券取引所第1部)に上場もしています。しかし、そんなことは中国ではまったく通用しませんでした。まったくの無名であり、取引先が信頼してくれず、取引をしてくれない。これでは、仕入れができません。日本にいては、絶対にあり得ないようなことが次々に起こりました。