地下鉄の車両は、
どこから地下へ入れるのか?

 地下鉄路線が新しく建設されたとき、車両はどこから地下へ入れるのだろう。これは誰もが抱く素朴な疑問である。言われてみれば、地下鉄は基本的には市街地の地下を走る高速鉄道なので、列車を地下に搬入しなければならない。このテーマはかつて漫才のネタにもなったが、あながち一笑に付すだけでもない。

 もっとも、地下鉄には地上を走っている区間もあるので、そういった路線では地上区間から列車を走らせていけば、自然に地下に潜っていける。また、たとえ地上区間がない路線でも、JRや私鉄と相互運転している路線であれば、地上区間がある地下鉄路線と同じように、そのまま地下に潜っていくことができる。

 問題なのは、全区間が地下を走っている路線の場合だ。どのようにして、地下に敷かれている線路上に車両を運んでいるのか。地下トンネルを掘削するとき、車両をあらかじめ地下に運び込んでおけばよいだとか、地下で車両を製造しているのだとか、それぞれが好き勝手なことを言って、話が大いに盛り上がるものである。

 どの鉄道にも車両基地がある。JRも大手私鉄も中小の私鉄も、そして第3セクターの鉄道も車両基地を備えているものである。地下鉄にも、ちゃんとした車両基地がある。しかし、地下鉄だからといって、車両基地が地下にあるとは限らない。地上に車両基地がある場合は、地上から地下に向かってトンネルが設けられており、そこから車両は地下に潜ってレールの上を走らせていくわけである。

 では、車両基地が地下に設けてある場合はどうか。列車をそのまま走らせて、地下に潜らせるというわけにはいかない。地下の車両基地の近くに、車両の搬入口が設けてある。そこから大型のクレーンで、車両を一両ずつ地下へ下ろしていくのである。そして、地下の車両基地で車両に車輪を取り付けたり、車両を連結したりして運転できる状態にするのだ。車両の搬入口は、ある程度の敷地が必要なので、公園の一角に搬入口が設けられていたりする。普段は扉が閉められているので、そこが車両の搬入口だということは一般の人には気づかれないことが多いようだ。