アナログアプローチで実現する住民中心のまちづくりPhoto:PIXTA

近時、スマート○○という単語が世の中にあふれている。スマートエネルギー、スマートモビリティ、スマートヘルス、スマートペイメントなどがあるが、それらを総括した概念としてあるのが、今回取り上げる「スマートシティ」である。連載『ザ・グレートリセット!デロイト流「新」経営術』の#7は、このスマートシティについて考察を深めたい。(デロイト トーマツ グループ ディレクター 松山知規、マネジャー 黒石秀一)

スマートシティの誤解を解く
そのカギは「スマート」と「シティ」の分離

 スマートシティ(厳密にはsmarter cities)という単語が、IBMによって初めて使用されたのが13年前の2008年。同じ年にAppleが運営を開始した「App Store」と比較すると、スマートシティは一部のビジネスマンに聞きなじみのある言葉となり始めているが、社会一般的に広く知られている概念にはまだなっていないように思われる。

 ではスマートシティとは何か。もしご存じない方は、日本語のスマートシティでも英語のSmart Cityでも良いので、ウェブ検索エンジンで画像検索をしてみていただきたい。皆さんが目にするものはおそらく大都市を背景に何やらクラウドやWi-Fiのアイコンやデータが光のように飛び交っているという、いわゆるテクノロジー社会・デジタル社会といったイメージではないだろうか。

 確かに、スマートシティにおいて、こういったテクノロジー・デジタル要素が大きな役割を担うことは間違いない。しかし、スマートシティの本質は、「スマート」と「シティ」を分けて考えることで理解が容易になる。「スマート」が指す、テクノロジーやデジタルは道具であり、「シティ」とは住民が暮らし、育むコミュニティや都市全体のことを指すのである。

 だからこそ、「スマートシティ施策」とは、地域で複雑化・高度化する課題をデジタルも活用しながら解決・緩和に導く取り組みなのである。何も全く新しい考えではなく、昔からどこの地域でも行ってきた、いわゆる「アナログなまちづくり」の土台の上に、当該地域コミュニティの住民や拠点を置く企業、そして地方公共団体などが、おのおのの得意領域を活かしてテクノロジーを載せていくことなのだ。