コロナ禍が子どもたちの心の健康を直撃している。
カナダ・カルガリー大学の研究者らは、2020年1月~21年2月16日に東アジア、欧州、北米で報告された青少年(18歳以下)のメンタルヘルスに関する29件の研究データを集積。合計8万0879人(平均年齢13.0歳、女性52.7%)分を統合解析した。
その結果、抑うつ症状を訴えた青少年は25.2%、不安症状は20.5%だった。18歳以下の4人に1人が抑うつ症状を、5人に1人が不安症状を抱えていたわけだ。
有病率はパンデミック前のおよそ2倍に相当し、ハイティーンの青少年、とりわけ少女たちが高いレベルで抑うつや不安を経験していることも明らかになった。
研究者は、「思春期は家族との関係が希薄になり、仲間や友人が社会と自分をつなぐ絆になる。ところが、コロナ禍でそのほとんどが消失してしまった」と指摘し、「入学・卒業式、成人式など『区切り』になる大切なイベントが省略されたまま、人生が進んでいく喪失感の影響は計り知れない」と注意を呼びかけている。
日本では国立成育医療研究センター「コロナ×子ども本部」が第3波中の20年11~12月にアンケート調査を実施。924人の子どもと保護者3705人の回答を得た。小学4年生以上には心の健康に関する質問も行った。
その結果、小学4~6年生の15%、中学生の24%、高校生の30%に中等度以上のうつ症状があることが判明している。
子どもの抑うつ症状は腹痛や頭痛などの身体症状やイライラ感、暴力や自傷など衝動的な行動として現れやすい。成人とは違う「SOS」に気をつけたい。
親や家族の対応は、(1)受けとめる、(2)これからできることを一緒に考える、の2点が基本。
まず子どもたちの不安や怒りを受けとめ、言葉がつたなくても言語化できるよう「聞く姿勢」をとること。次いで、喪失した日々に代わる毎日のルーティンと将来への見通しを具体的に話し合っていこう。確固とした日々の基盤と目標が定まるに連れて、子どもたちの安心感も回復してくる。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)