会社によって異なる敬語文化、タメ口のせいで不倫疑惑も

「新卒で入った会社は上司から部下へも基本的に敬語を使う文化だったので、敬語=公、という感覚でいた。転職した会社では、上司から部下はタメ口がほとんど。タメ口はプライベートな感じがして、いまだになじめない」(30代女性)

 敬語は相手を敬う以外にも、丁寧な印象を与える効果がある。また、次のようなケースも。

「上司の男性が『タメ口でもOK』というタイプの人だったのだが、実際にタメ口を使っているのは女性の部下1人だけだった。結果的に2人は不倫しているという噂が流れ、社内だけではなく取引先でも話題に。フランクなのはいいが、誤解を招く言動は慎んでほしいと両者に対して思った」(30代男性)

「フリーランスなのでそこまで上下関係は気にしなくていい立場だが、女性の中には目上の男性にタメ口を使って距離感を詰める人が多いように感じている。男性同士だとその手は使えない(単に生意気な若造の印象になる)ので、ずるいなと思う」(40代男性)

 一方で、「部下に対しても敬語を使うようにしていたが、『それだと冷たい印象だ』と同僚から指摘されて悩んでいる」(30代女性)という意見も複数あった。管理職の立場からすると、適度な距離感を保ちつつ部下から親近感を持ってもらう……というのは難しさがあるようだ。

LINEやSNSではタメ語交じり?

 また、日常のやり取りやメールでは敬語を使うが、同じ相手とのLINEやSNSではその限りではないという人もいた。

「LINEのやり取りはスラングやネタの応酬になりやすいので、仲の良い年上の人だとあまり敬語は使わないかも。真面目な話になると、また敬語に戻るという感じです」(20代女性)

「短文メッセージだと、『うええええええ』『それな』など感情をパッと伝えるやり取りが多いので、職場の年下の人からタメ口でメッセされても嫌な感じはしないし、むしろうれしく感じることもある。タメ口スタンプと敬語の合わせ技だったりその逆など、後輩なりに気を使ってくれてるなあと思う」(40代女性)

 さらに、年齢によるアドバンテージがまったくない場では、敬語もタメ口もへったくれもない。

「オンラインゲームでのチーム戦で、小学生のユーザーから指示を出されたり、『使えねーな!』『下手くそ!』とののしられたり、あおられることもあります。自分が下手だからしょうがないので甘んじて受け入れます。会社の部下には見せられない姿です」(40代男性)

「社会人になってから通っている語学学校では敬語文化がほとんどない。年をとってから勉強を始めた人も多いので、20代が50代に単語を教えている場面もよくあるし、これはこれで面白いなあと思っています」(30代男性)

 場所が変われば、敬語に対する考え方も変わる。事件の容疑者となった男は、大学に在学中だったと報道されているが、社会に出てみれば「年下は年上に敬語を使うもの」というルールは、案外絶対のものではないと気づけたかもしれない。

 取り返しのつかない事件を起こす前に、彼の見ている世界が変わる機会が訪れなかったことが残念だ。