ハーバード教授が語る、トヨタの地域貢献活動がパンデミック下で生きた理由Photo:TOYOTA

ハーバードビジネススクールのウィリー・シー教授は、トヨタ自動車(以下トヨタ)の地域貢献活動に注目しているという。シー教授はトヨタの地域の経済や社会に貢献すべきという理念は、パンデミック下で同社にとって有効に働いたと話す。その理由とは。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)

>>前編より続く

ハーバードがトヨタの
地域貢献活動に注目した理由

佐藤 シー教授は今年8月、トヨタ自動車(以下トヨタ)の地域貢献活動に着目した教材『フェアパーク 新型コロナワクチン大規模ワクチン接種センター』(Fair Park Covid-19 Mass Vaccination Site(A))を出版しました。これは、トヨタがトヨタ生産方式の知識を活用して、テキサス州ダラス郡の大規模ワクチン接種センターのオペレーションを改善した事例です。この教材を執筆した動機は何ですか。

シー この教材は、パンデミック下でトヨタがNPO法人「トヨタプロダクションシステム・サポートセンター」(Toyota Production System Support Center, Inc. 以下、TSSC)を通じて、いかに地域社会に貢献したかを如実に伝えるものです。

 TSSCは、トヨタ生産方式のノウハウを提供することで、地域社会の製造業、公的機関、医療機関などのオペレーションの改善活動を支援していますが、教材では、今年2月~3月にTSSCがテキサス州ダラス郡の大規模ワクチン接種センターで実施した改善活動を取り上げています。

 TSSCのケースを書きたいと思ったのは、昨年の秋にTSSCとその支援先を招いて開催したウェビナーが学生から大好評だったからです。昨年はコロナ禍で研修旅行が実施できなかったので、「バーチャル研修旅行」のような形で開催したのですが、300人以上のMBAプログラムの学生が参加するほどの人気ぶりでした。

次ページ以降では、トヨタの事例から企業のリーダーが学べること、製造業のリーダーが今後10年、頭にとどめておくべきキーワードについて解説します。