部下を潰す
上司のアンコンシャス・バイアスとは

 アンコンシャス・バイアスとは直訳すると無意識の偏見、つまり自分自身が気づいていない偏ったものの見方のことです。「~するべき」や「~するものだ」という思い込みや決めつけです。最近では、著名人がこのような自分自身が気づいていない偏ったものの見方に基づいた発言をすることで批判されるケースも目立ちます。

「若い女性はおしとやかであるべき」という考え方で、スポーツ解説者がボクシングの女性オリンピック選手に対して発した言葉が批判を受けたり、「会議に女性が入ると長くなる」という考え方で、組織のトップが自組織のメンバーの女性比率アップについて発言したことが問題視され、退任することになったりした例など、みなさんも人が持っているアンコンシャス・バイアスが組織や個人にネガティブな影響を与えることについて身をもって感じていると思います。

 たとえば、みなさんの周りにはこのように部下をマネジメントしている上司はいませんか。もしくは、自分自身がこのように部下をマネジメントしていませんか。

・ 部下に緊急の残業を依頼するときに、まずは男性に声を掛ける
・ プライベートを重視する部下を昇進対象から外す
・ 子どもがいる女性の宿泊を伴う出張は、本人に確認せずに日帰りに変更する

 私たちは誰でも何らかのアンコンシャス・バイアスを持っています。これは決してすべてが悪いものではありません。たとえば、ビジネスマンが物事を判断するときに多くの情報の中から無意識のうちに最適な情報を選択できるのは、今までの自分の育った環境や過去の経験をもとにできあがったアンコンシャス・バイアスがあるからで、ビジネスに必要なスピーディーな判断には欠かせません。

 ただ、対人関係においては自分の持っているアンコンシャス・バイアスが相手に対する決めつけや押しつけになり、それに基づいた何気ない行動や発言が気づかないうちに相手を傷つけたり、相手を苦しめたりするなどのネガティブな影響を与えることがあります。

 自分が良かれと思って対応していたことが、実は本人にとってそうではなかった、ということもあるかもしれません。大切なのは「自分にはアンコンシャス・バイアスがある」ということを意識し行動することです。そして、「テレワーク勤務では部下にどんなメリット・デメリットがあるのか」を常に考えながら、自ら意識と行動を変革することにより、部下のやる気と自信を奪うことなく、かつ成長につながる新たなマネジメント手法を模索していくことが重要です。