Gさんが年収ダウンして3人の子どもを育てる場合
60歳時点の資産はどうなる?

 現状のままだと子どもを3人授かった場合、60歳時点の金融資産額は2億930万円から2億2430万円の範囲に収まると予想されますが、Gさんは転職を予定しています。

 額面年収800万円前後の会社を見ているということなので、そうなった場合の試算も行っていきましょう。手取年収は600万円、ボーナスは考慮せず毎月の手取額を50万円とします。

 Gさんの手取り収入は月80万円から転職により50万円に減額します。そのため、毎月の一家の貯蓄額も30万円減額になります。84万円−30万円=54万円、年間では648万円です。60歳までの30年間では648万円×30年間=1億9440万円になります。

 しかし、先程の試算でGさんが産休・育休を取得する6年間は「一家の貯蓄は0円」としたことから、648万円×6年間=3888万円の貯蓄額の減少になります。さらに、先ほどと同じように仕事に完全復帰するまでの期間3年は収入は半減するとします。すると、月収は夫40万円+Gさん25万円(50万円の半額)=65万円になります。支出は変わらず36万円としましょう。年間の貯金額(=収支)は、(65万円−36万円)×12カ月=348万円です。

 毎年の貯蓄額は648万円からほぼ半減の348万円になりますので、3年間で1044万円の貯蓄が減額になります。1億9440万円から産休・育休期間の減額分3888万円、収入半減期間3年の減額分1044万円を差し引くと、60歳までに1億4508万円の貯蓄ができることになりますね。

 Gさん夫婦の場合、現在の保有金融資産額が4250万円です。こちらに、先程計算した60歳までの貯蓄額1億4508万円を加えた1億8758万円が60歳時点での資産総額となります。ここから3人の子育て費用4500万~6000万円を差し引くと1億2758万円から1億4258万円を60歳時点で保有している計算になります。

 子どもの誕生により車を購入したり、あるいは広い家に引っ越したりすることもありえるでしょう。年間100万円、30年間で3000万円の支出が増えたとしても、60歳時点では少なくとも9758万円も残ります。

 また、ご夫婦共に正社員で60歳まで働くつもりとのことですし、65歳まで再雇用などで働いたら公的年金額はかなりの金額になると推測されます。

 現在でも、Gさん夫婦は収入の割には堅実な生活をなさっています。そんなGさん夫婦が老後に放蕩(ほうとう)生活をするとは思えません。

 さらに試算では退職金や産休・育休時の給付金なども考慮していません。以上を踏まえれば、Gさんが転職して収入減になったとしても、老後を過度に心配する必要はないと思います。経済的な不安は少ないのですから、Gさんの健康を第一に考えて転職活動を行っていいのではないでしょうか。

 ただ、相談文には「仮に年収が半減した場合生活は成り立つのか、転職することで捨てるべき選択肢(子どもを諦めるなど)がありましたらご教示ください」と書かれていることから、「過度に心配する必要はない」と筆者が述べたとしても、まだ不安かもしれません。

 そこで、金額的にたいしたことはないのですが、アドバイスを一つ。

 夫は1万円、Gさんは1万6000円の保険料を負担しています。金融資産が4250万円もあるので、病気やケガをして入院しても医療費はそこから賄うことができるはずです。万が一働けなくなっても公的な制度である「傷病手当金」が最長1年6カ月あるので、保険に加入する理由がないと思います。

 ご夫婦で合わせれば年間で31万2000円の支出減になり、10年間では312万円、20年間では624万円と期間が長くなるほど支出減になるのでぜひ、保険を見直しましょう。