尾原 ちなみに、高宮さんが「メルカリ」に投資したのは、いつ頃でしたっけ?

高宮 「メルカリ」のアプリが出てきたのは、2013年頃で……。

尾原 結構初期の頃ですよね。

高宮 そうそう。アプリが出て3カ月後くらいには、「メルカリ」に投資しています。

尾原:では、8年ぐらい前ですね。

「小さき者が力を持つプラットフォーム」に対して、高宮さんは長く注目されていましたよね。実際に、他の人が投資する前に投資をされて、結果を出されています。あらためて振り返ってみて、どのように分析されていますか?

高宮 先ほどの3つの流れを説明していきますね。

全ての消費者が「生産者」として
「過程を共有」できる時代が来た

高宮 一つ目は、昔からのインターネットの本流みたいな話で、インターネットの性質そのものだと思います。インターネットは、「収穫逓増・Winner takes all(勝者総取り)・規模の経済」と言われがちですけれど、実は逆もしかりだと思っています。

 インターネット以前は、固定費への事業投資が必要で、ビジネスとして成り立つクリティカルマス(臨界量)が大きかった。現在は、インターネットが、全てを「変動費化」してしまったので、「市場が小さくてもスモールビジネスが成り立つ」ようになってきたのだと思います。

尾原 小さくてもビジネスが成り立ちうるということですね。

高宮 これが「両極の逆側」で、インターネットがイネーブル(可能に)したものです。

 2000年頃の「Amazon」立ち上げ期の時代からのインターネットは、両方の流れがあったと思っています。その意味でいうと、その流れを脈々と受け継いでいて、個人のクリエイターさんとか、ひと昔前でいうとプロコンシューマー(生産消費者)みたいな感じとか……。

尾原 そうですね。消費者が生産者になれる。買い手が売り手にもなれる。

高宮 ユーザーとしてオタクになったから自分が作り手側に回るという感じですね。それを受けて、「Creema(クリーマ)」のようなハンドメイドマーケットサービスが成り立つわけです。

尾原 ひとつひとつ深掘りしたいんですが……。まずは、3つ全てを聞いてから、戻りましょう。

高宮 一つ目をまとめると、「マイクロエコノミー」が成り立つようになってきた。「マイクロエコノミー」が成り立つから、クリエイターも「ビジネス化」をしやすくなったということです。

 二つ目は、ライブ配信などの「動画×リアルタイム化」の流れです。

 例えば、ライブ配信サービスの「SHOWROOM(ショールーム)」やゲームプレイ動画の配信の「Mirrativ(ミラティブ)」のように、リアルタイムで動画を配信するサービスがあります。

 配信者さんと視聴者さんがチャットや音声でやりとりするような、「リアルタイムでの双方向コミュニケーション」が、動画というリッチな形で、成り立つようになりました。これは「テクノロジーが進化したこと」や「テクノロジーのコストが安価になったこと」によって、イネーブルされるようになった、ということが二つ目です。

尾原 今まで以上に、誰もが動画でライブ配信できますよね。もっというと、ライブ配信でつながることによって、「個性の魅力」や「生々しさ」や「途中過程」のようなものが、さらけ出せるようになったことが、二つ目ということですね。