記者会見では他の記者から、入管の行為は保護責任者遺棄致死や、未必の故意による殺人罪に当たるのではないかという質問も上がった。

 2007年以降、ウィシュマさんを含め17人の収容者が入管で亡くなっている。理由は、病死、自死、餓死など。これらについて、入管職員が責任を追及され起訴されたなどという報道は見当たらない。

 指宿弁護士は「ウィシュマさんの件は、刑法上の問題が成立すると思う。殺人罪の可能性もありますし、保護責任者遺棄致死の可能性もあると思う」と語った上で、「名古屋地検で捜査が進められている。検事が法律家としての良心に基づいて調査するなら、必ず起訴されると思う。起訴されなければならない、と思います」と重ねた。

メディアを含め、
外国人嫌悪があるのではないか

 会見があった10日、指宿弁護士らはウィシュマさんの妹のワヨミさん、ポールニマさんとともに、ウィシュマさんの入管での生前の様子が記録されたビデオ映像の後半を確認するために法務省を訪れた。代理人弁護士を立ち会わせるように繰り返し求めていたが、入管側はこの日も立ち会いを認めなかったため、映像の確認を取りやめたという。

 収容者の措置や仮放免も入管の裁量なら、記録の開示も、映像確認にあたっての立ち会いも入管側の裁量…。入管内で人命が失われたことの真相解明を求めているのに、入管側のルールに則ってそれを行えと言われている状況だ。

 さらに、指宿弁護士は会見で何度か、「ゼノフォビア(外国人嫌悪)」という言葉を口にした。

 簡単にいえば、マスコミ側のこの問題に対する勝手な思い込みや偏見を突いたのだ。例えば、「外国人の問題は読者からの反発が強いから…」とか、「外国人に関する問題は慎重にやらないといけないから、強く書けない」などというような考えが根底にあるのではないかということだ。マスコミだけではなく、現在の入管の問題点の背景にもゼノフォビアがあるとも指摘した。