年金制度を変更する場合には、激変緩和措置が必要だ。例えば、現在年金を受け取っている人への給付額をいきなり大幅に削減するような施策は、国民にとって好ましくないし、政治的にも不可能に近い。しかし、現在の基礎年金を全額財政の負担に切り替えることは簡単にできる。

 総裁選候補者の討論会では、高市早苗前総務大臣が、現時点では2分の1負担の基礎年金の財源を全て税にすると「12.3兆円分」の巨額な負担が生じると懸念を示した。ただ、アベノミクスの積極的な継承を主張している高市氏の考え方を踏まえて、当面この額の国債を発行して日本銀行に買わせることを考えてみよう(直接的に日銀が買っても市中銀行から間接的に買っても、おおよその効果は同じだ)。すると、公平で大規模な経済対策になるのと同時に、金融緩和の実効性を高めるデフレ対策になり得る。

 後でも触れるが、河野氏は高市氏的な経済政策を取り入りつつ、「保障年金構想」を実行するプランを練るといい。

年金の全額税負担は
「いいことだらけ」である理由

 さて、基礎年金の財源を全額税負担にすることから保障年金構想をスタートすると、どのような「いいこと」があるのか。実は、いいことはたくさんある。少し考えただけでも多数のメリットが思い浮かび、まるで「いいことだらけ」の様相を呈する。

 さっそく、ご紹介しよう。

(1)相対的に貧しい若者の「手取り」が直ちに増える

 直ちに生じるメリットで、この構想の最大のメリットともいえるものは、若者を中心とする低所得で経済的に恵まれない人から、現在月額1万6610円も一律に負担させている保険料を取らずに済むことだ。彼らには、お金が必要だ。

 保障年金構想は、年金保険料負担世代(20歳から59歳まで)にとって月額1万6610円の現金給付と同等の効果を持つ。年間約19万9000円の“給付”だが、「一時金」ではなく継続的にもらえるお金(実際には負担の軽減だが)で、毎月使える「手取り収入」が増えることの効果は大きい。

「現金給付をもう一度検討」と述べている岸田文雄前政務調査会長には、「実質的に広く現金給付を行うのと同様の効果を持ち、継続的である点ではさらに強力な政策だ」と説明すると、理解してもらえるはずだ。