(6)第3号被保険者問題の発展的解決

 現在の公的年金制度には、サラリーマンの妻(第3号被保険者)は国民年金(基礎年金)の保険料を負担しなくても将来の国民年金部分の給付が受けられる「ゆがんだメリット」が付いている。働いて収入のある女性は年金保険料を負担する一方で、サラリーマンの妻は負担が必要ないという対比は、女性の職業進出に対してネガティブなインセンティブとなっている。

 基礎年金を全額税金負担にしてしまえば、この不公平が解決する。

 女性の社会的活躍に熱心な野田聖子幹事長代行にも、評価してもらえるのではないか。

(7)年金事務の著しい効率化

 基礎年金の財源を全て税負担にすると、国民年金への加入勧奨、国民年金保険料の徴収、免除申請への対応など、国民年金(基礎年金)に関連する「事務」のいくつかが「廃止」できる。効率化などというケチなものではなくて、廃止だ。もちろん、コストカットの効果は大きい。

 経済的に困窮している現役世代の手元に現金が残る一方で、経済的強者(高所得者、富裕層等)が税金を多く負担する「格差対策」を行うことが、同時に「行政の効率化」にもつながるのだ。理想的な政策ではないか。

(8)デフレ対策としても強力だ

 自民党が「挙党体制」を目指すには、高市氏やその後見人である安倍晋三前首相にも喜んでもらわなければなるまい。

 財務省と日銀の協力が前提だが、保障年金構想の速やかな実行は、当面の財源を国債としてこれを日銀が購入するなら、前述のように財政の拡張と金融緩和の実質的な拡大として機能する。まさに、第2次安倍政権が発足した当初のオリジナル・アベノミクスの趣旨にかなうものだ。

 民間経済に広く公平に現金が出回るのだから、デフレ対策のための金融緩和策としては、日銀による上場投資信託(ETF)買い入れのような政策よりもはるかに筋が良い。