EU諸国が米国への不信感を公然と示すのは、旧ソ連軍がアフガニスタンでイスラムゲリラに勝てず、1989年に撤退して軍事的威信を失うと、東欧のソ連の同盟国が続々と離反したのに似たところがある。

ウイグル「人権問題」でも
首尾一貫しない“対決姿勢”

 アフガニスタン問題では中国との関係でも米国の首尾一貫しない姿勢が目立つ。

 2001年に始まった「テロとの戦い」では、米国はウイグル人イスラム過激派のテロ対策に躍起の中国と協力関係にあった。

 米国は、新疆のウイグル人過激派がヒンズークシ山脈を越える回廊で中国と接するアフガニスタンなどに潜入、米軍に対するゲリラ戦に加わることを防止するよう中国に求めた。

 米国は2004年には、ウイグル人の反中国組織「東トルキスタン・イスラム運動」(ETIM)をテロ団体に指定し、続発するテロに悩んでいた中国は喜んで米国に協力した。“イスラム国”には少なくとも300人の中国人(ウイグル人)が参加していたといわれる。

 ところがトランプ政権は、一転して中国との対決を唱え、その理由の一つに「ウイグル人に対する弾圧」を挙げ、昨年10月には、ポンペオ米国務長官は突如、「ETIM」のテロ団体指定を取り消した。

 米国が敵視していた中国のイスラム過激派はにわかに「人権問題の被害者」となった。米国は「テロとの戦い」は中止して、中国との対決に集中することになったのだ。

 ところが今年8月、アフガニスタンからの米軍撤退の際、「イスラム国ホラサン支部」(IS-K)がカブール空港で自爆テロを行い、射撃戦も起きて米兵13人やアフガン人約170人が死亡する事件が起きると、米国は再びテロとの戦いに目を向けざるを得なくなり、「IS-K」と対立していたタリバンと協力、「昨日の敵は今日の友」となった。

 タリバンは“イスラム国”系のテロ集団への対処では中国と提携することで以前から合意していたから、米国と中国、タリバンが“イスラム国”の残党を共通の敵とする複雑怪奇な協調関係が生まれた形になっている。

 米国はイスラム過激派を弾圧する中国を非難しにくい状況となり、そのためもあってか、9月10日のバイデン・習近平会談後の発表ではこの問題に言及していない。

 AUKUSは新疆でのウイグル人弾圧については、“テロとの戦い”の「行き過ぎ」を非難するだけのあいまいな態度を取るのだろうか。