コロナ禍で仕事ばかりか
住まいも失う人たち

「コロナで死ななくても経済で死ぬ国」を何とかしろ、これが新しい自民党総裁の最大使命だ大手自動車メーカー系列の工場で期間工として働いていた男性は、雇い止めにあった後、貧困へと転落した(写真の被写体は記事と関係ありません) Photo:YOSHIKAZU TSUNO/gettyimages

 この男性はもともと大手自動車メーカー系列の工場で働く期間工だった。期間工を雇い止めにされた後は、派遣契約に切り替えられ、会社が用意した寮に住むことになった。派遣労働者になったことで年収は350万円から270万円にダウン。その間、フォークリフトやクレーン運転士などの資格を取ったが、待遇は変わらなかったという。

 その後、居酒屋の店長に転身したものの、実態は個人事業主の名ばかり店長。住まいがないので店舗内に住み込んで働き詰めに働いたが、毎月手元に残るのは5万円ほどだった。その店舗もコロナウイルスの感染拡大の影響で閉店。ホームレスとなった男性は日雇い派遣などをして食いつないだものの、ついに所持金が付き、支援団体にメールを送ったのだ。「どうか助けてください……」と。

 コロナ禍において生活困窮に陥った人の多くは、低賃金で不安定雇用の非正規労働や、本来なら労働契約を結ぶべき「名ばかり個人事業主」である。中でも、寮付き派遣は雇い止めと同時に住まいも失い、即路上生活になるリスクのある究極の不安定雇用である。寮付き派遣はリーマンショックのときにも社会問題となったが、この間、なんら対策が取られないどころか、性別問わず、幅広い年齢層に広がっていることが明らかになった。

 仕事も住まいも失い、頼れる家族も蓄えもないとなると、通常は生活保護を申請することになる。菅義偉首相は生活困窮者に対する対策として「最終的には生活保護という手段がある」という旨の発言をした。

 しかし、生活保護は必ずしも有効な救済手段とはなっていない。生活保護への忌避感は、想像を上回る根深さなのだ。筆者の取材では、支援団体にSOSを発する人たちの2人に1人が生活保護の申請に二の足を踏んでいた。