電波管理は医療機能評価への
追加も検討されている

(2)導入コストは抑えることができる

 前述のネットワークの統合が可能な場合は導入コストを抑えることができる。毎月のランニングコストについては「院内で導入しているインターネット回線のサービスプロバイダーへすでに支払っているため、追加は発生しない」と川森特任教授は説明する。 

 また、現在、厚労省が「新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金」で病院を支援している。昨年度は10.5万件の申請があったそうだ。2021年度の補助対象には「#病室WiFi協議会」の活動によって「入院患者のオンライン面会等のためのWi-Fi環境の整備に要する費用」も加えられた。

 この補助金の申請は9月30日までに工事が終わっていることが条件になっている。このため、いまからでは申請は難しいが、「#病室WiFi協議会」の笠井さんは記者会見で「新型コロナ枠の補助金でなく、単独の補助金の設定を要望していきたい。厚労省にどのくらいの病院から申請があるかを知ってもらうためにも、見積もり等を添えて申請書を出してみてください」と呼びかけている。

病室に患者用無料Wi-Fi導入がやはり必要な理由筋ジストロフィー患者でCILふちゅう代表、#病室WiFi協議会メンバーの岡本直樹さん(写真左)。筋ジストロフィー患者は病院に年単位で入院している人が多い(筆者撮影)

 自治体が「公衆無線LAN等環境整備事業費補助金」として、2分の1補助を設定していることもある。

(3)システムにセキュリティ管理を組み込む

 セキュリティ管理については、病院でインターネット接続することで「ウィルス感染した!」と訴えられたり、あるいは、病院からのインターネット接続がサイバー犯罪に使われたりすることが想定される。

 このため、インターネット接続時に利用規約への同意や病院利用者以外の人が容易に利用できないようにするための認証を取得したり、どの時間帯に誰が使っていたかのアクセスログを取っておいたりするリスクマネジメントが推奨されている。業務用製品には、総務省等の指針に従って、これらの仕組みが組み込まれている。

 電波環境協議会によると、今秋からは医療の関連学会や職能団体等と連携する形で「医療安全管理からみた電波管理の在り方」等の検討会を開催する予定という。また、同協議会は2018年から日本医療機能評価機構の「病院機能評価」の評価項目への文言追加を要望している(*4)。

 現在、病院に電波管理を含めた医療情報システム担当者(元IT企業社員、診療放射線技師、臨床工学技士が多いという)の配置は義務化されていないが、看護師等の業務を妨げないよう、それは検討すべきだろう。また、その業務量に合わせて、人件費を捻出できる医療安全管理面の加算の設定もあるとよいだろう。

出典等
*1 #病室Wi-Fi協議会,全病室で無料Wi-Fiが使える病院(全国の病院名一覧、および都道府県導入ランキング)2021年、https://wifi4all.jpn.org/hospital/index.php(対象病院は「全国都道府県別がん診療連携拠点病院」451施設、「小児がん拠点病院」15施設、「国立病院機構」140施設、「筋ジストロフィー患者専用病棟のある病院」の合計563施設、一部重複あり)
*2 電波環境協議会医療機関における電波利用推進委員会, 2020年度医療機関における適正な電波利用推進に関する調査の結果,2021年、 https://emcc-info.net/medical_emc/pdf/21-302-R_R2_questionnaire_hsptl.pdf
*3 電波環境協議会医療機関における電波利用推進委員会,医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き(改定版)、2021年,https://emcc-info.net/medical_emc/202107/HP1_2_medical_guide_rvsn_20210712_esse.pdf(ただし、電波環境協議会の手引き「改訂版」では、病院・診療所における患者用のWi-Fiモバイルルータやテザリング機能の使用をエリア等の条件付きで許可する文言に変更された)
*4  電波環境協議会医療機関における電波利用推進委員会, 2020年度活動報告,2021年,https://emcc-info.net/medical_emc/pdf/21-301-medical-emc-doc2020.pdf