こうした報酬系の流れの中で重要な働きをしていると考えられるのが、脳の側坐核という部分です。実は、近年の研究で、慢性疼痛やうつ病の患者さんは、側坐核の働きが低下していることがわかってきました。ですから、低下した側坐核の働きを活性化させるように脳に働きかけると、痛みが和らいでくると考えられるわけです。

 側坐核を刺激するポイントは、次の通りです。

・自分の好きなことを、無理せずに楽しむ
・好きなことが見つからない場合は、運動がおすすめ
・最初は小さな目標からはじめ、少しずつ目標を大きくしていく
・時間制限を設けて行うと、より達成感を感じやすい

 最初から大きな目標を掲げてしまうと、成し遂げられず、達成感を得られないままやる気をなくしてしまいます。最初は、ほんのちょっとがんばればできる、身近なことから目標にしていきましょう。

 たとえば、1日おきにトイレ掃除をする、毎日必ず10分間ウォーキングをする、毎日3分間縄跳びをするとか、何でも構いません。ただ、体を動かすことの方がより効果的で、目標も達成しやすいと思います。特に、時間制限を設けてやると、時間内にできたときの達成感が高まるので、おすすめです。

痛みの原因にこだわるのをやめてみる

 慢性疼痛は、原因がはっきりしていてそれを治せば改善する急性疼痛とは違います。脳や神経の痛みの記憶が深く関係していたり、生活や環境も関与しているケースも多く、複雑なので調べても原因が単一のはっきりしたものではないケースが、かなりの数に上ります。

 だから、慢性疼痛の患者さんは、ひたすら原因を追及したり、それを取り除こうと考えるより、その痛みとうまく付き合っていく方法を体得したほうが、ずっとラクになれると思うのです。