CAが青ざめた痛恨のミスにファーストクラスの社長が見せた「一流の懐の深さ」写真はイメージです Photo:PIXTA

柔道や剣道、また茶道、華道、書道など、武芸の世界では、単に技や知識が優れているだけでなく、高いレベルの精神性や言動が伴っている状態を「道を究める」と表現します。ゴールを目指す道のりを、実際の道になぞらえたのが「道(どう)」という概念です。これは、ビジネスにおいても通じる概念で、「道」を究めた状態を「プロフェッショナル」と言い換えることができるのではないでしょうか。今回は私がファーストクラスで出会ったエグゼクティブの「プロフェッショナル」をご紹介します。(CCI代表取締役・元国際線チーフパーサー 山本洋子)

ある人気ボーカルの「プロフェッショナル」ぶり

 ファーストクラスに乗るお客様は、世界の政財界のトップや芸能界、スポーツ界など各分野の第一線でご活躍する著名人が多いです。誰もが知る著名人となるまでには、長い道のりをひたすら努力し、鍛練を重ねてきたからに他ありません。世の中に名をはせる人は、その道を究めた「プロフェッショナル」であることが多いものです。

 機内での過ごし方を見ても、プロフェッショナルをうかがえることがあります。

 人気のあるロックバンドでボーカルを務める方がお乗りになったときのことです。

 他のメンバーはお酒を楽しみ、思いのまま機内でくつろいでおられたのですが、ボーカルの彼は違っていました。乾燥が激しい機内で、喉を傷めないようお酒ではなく水を頻繁に取っていらっしゃいました。その水も、体を冷やさないよう常温の水です。そして少しでも湿度を保つために、いつも湿り気の多いおしぼりをお手元に置かれていたのです。

 夏の暑い日でしたが、体を冷やさないように機内では厚手のトレーナーをお召しになり、マスクを着用する徹底ぶりです。マスクは今ではみなさんが違和感なく着けていますが、当時は男性が乾燥対策のために機内でマスクを着けている姿は珍しい光景でしたので、とても印象的で、プロフェッショナルを感じたものです。