NTTが全国に260拠点の
サテライトオフィスを配置する理由

 さて、この転勤廃止のニュースで一番重要なポイントは、その前提として2020年度に全国に260拠点以上のサテライトオフィスを配置するということです。先にリモートワークできる環境を整えることで、転勤や単身赴任が不要な働く環境をつくる。ここがまずもって画期的なポイントです。

 全国に260拠点というとどれくらいの規模なのか、ピンとこないかもしれませんね。単純計算では、1都道府県あたり5拠点ということになります。

「いや、大都市の方がサテライトはたくさん必要だろう」という考え方はわかりますが、NTTの場合、東京に代表される大都市にはすでに数多くのグループ各社の事業所が設置されています。ですから、実際には地方都市のサテライトの方が増加分としては多いと考えていいと思います。

 読者の皆さんのイメージが湧くように、飲食店チェーンで全国の店舗数が260前後のお店を挙げてみましょう。ロイヤルホスト、ビッグボーイ、焼肉きんぐ、串カツ田中、星乃珈琲店、リトルマーメイドといった顔触れが、だいたい全国で220店から280店ぐらいのチェーンです。

 ちなみにスタバは約1600店、マクドナルドは約2900店、CoCo壱番屋や吉野家は約1200店、サイゼリヤは約1100店ですから、それらと比較してもう少しマイナーなチェーンがある都市ぐらいが全国260拠点の候補地だというとイメージが湧くのではないでしょうか。

 たとえば栃木県でいえば、宇都宮市にもともとの支店があるとして小山市、栃木市、那須塩原市にひとつずつサテライトができるイメージ。人口の多い愛知県であれば名古屋市、豊田市は既に支社や支店がある中で、サテライトは名古屋市郊外に3カ所、岡崎市、豊橋市、刈谷市、一宮市、豊川市に1カ所ずつできるぐらいでしょうか。これが全国260拠点のイメージです。そう考えると32万人のNTTグループ社員のうち、かなりの数の従業員が都会から実家に里帰りして、職住近接で暮らすことができるようになるかもしれません。