しかしながら、働きがいを高めるべき対象は若手に限りません。自社で働くすべての従業員の働きがい、エンゲージメントを可視化し、不断の努力によりそれを高めていくことが、企業価値の向上に欠かせないという流れは明確です。
日本でも、ESG(環境・社会・ガバナンス)への配慮やSDGs達成に向けた活動に力を入れ、企業価値判断の指標である「非財務指標」として、働きがいに注目する企業が増えてきています。実際、働きがいの高い会社はそうでない会社よりも、業績パフォーマンスが高いことがわかっています。
4つの職場タイプで違いを分析
事業運営の方向性も大きく影響
GPTWジャパンでは、働きがいは“働きやすさ”と“やりがい”で構成されているとし、この“働きやすさ”と“やりがい”を二軸に取り、会社を4つのタイプに分類して、売り上げ対前年伸び率を分析しました。その結果、働きやすさとやりがいの両方が高い「いきいき職場」は、「しょんぼり職場」や「ぬるま湯職場」より売上高の伸び率が高い結果となりました。
https://hatarakigai.info/library/analysis/20180712_135.html
また、2010年の「ベストカンパニー」のうち、上場している10社に、ランキング発表後の2010年3月末に等金額を投資した場合、2021年3月末時点でリターンは280.4%(年率換算前)という結果も出ています。なお、同時期のTOPIXと日経平均のリターンはそれぞれ99.6%と163.1%でした。
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以上のデータからも、働きがいを高めるために継続して施策を実行し、従業員のエンゲージメントが高い状態を実現させながら事業運営を行うことは、業績向上との相関関係があると言えます。働きがいを向上させる努力から、職場では様々なチャレンジが促されて良いアイディアの実現に繋がること、そして、仲間と一体になって目標達成への意欲がもたらされることが、業績にも良い影響を与えていると考えます。
人的資本へ投資する経営層は
業績への好影響を感じている
ここで、2021年6月に経営層を対象として実施したアンケート調査の結果をご紹介します。コロナ禍における人的資本への投資の程度を確認したところ、「コロナ禍以前よりも増額して投資した」が 23.1%、一方で「コロナ禍以前も、現在もほとんど投資していない」が 26.1%という結果になりました。この調査では、「生産性の低さ」「メンバーの健康維持」「人材育成・キャリアサポート」などが、人的資本を重視した経営において課題であることもわかっています。