神社本庁Photo:Diamond

全国約8万社の神社を傘下に置く宗教法人、神社本庁。その元幹部2人が、不動産売買を巡って神社界上層部と業者の癒着があったと内部告発した結果、懲戒処分を受けたのは不当だとして地位確認を求めた訴訟の控訴審判決が9月16日、東京高裁であった。結果は一審に続いて被告・神社本庁の“完敗”。さらに、この「土地ころがし疑惑」に絡む別の新たな訴訟も起こされた。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

役員会の上告決定に
上皇陛下のおいは異論あり

「冤罪を晴らすべし」「(高裁判決は)他の宗教団体にも悪影響をもたらす」――。

 控訴審判決からおよそ1週間後の9月24日に開かれた神社本庁の臨時役員会。

「逆転勝訴のはずがまさかの連敗にショックを受けていた」(神社本庁関係者)という神社本庁の事務方トップ、田中恆清総長が、「自分は(最高裁へ)上告すべきだと思う」という趣旨の口火を切ると、出席した理事らからは冒頭のような追随の声が相次いだ。

 だが、役員会に同席した担当弁護士2人の意見は分かれ、うち1人からは「最高裁での逆転勝訴は困難」とする否定的な見方が示された。それでも臨時役員会は圧倒的な賛成多数で上告を決議した。

 一方、この決議を嘆いたのが、神社界の“権威”の象徴でありながら田中総長に不信感を抱く、上皇陛下の義理のおい、鷹司尚武統理だ(関連記事:『神社本庁総長の辞任表明を巡り、神社界上層部に「前代未聞の亀裂」』)。

 閉会のあいさつで、鷹司統理は「私は議決権を持たないが、上告には反対だ。本当にこの結論で良かったのか」と、主戦派に異例の苦言を示した。

 神社界の聖俗を担う両トップで意見が分裂する中、戦いの場が最高裁に移ったことで、来年6月に任期が迫る田中総長の後任を巡る人事レースの行方も不透明感が増した。片や、菅義偉前首相と距離が生じたとされる神社本庁の関係政治団体、神道政治連盟(その国会議員連盟の会長は安倍晋三元首相)は、存在感の回復に躍起となっているようだ(関連記事:『菅政権誕生で沈む神道政治連盟、首相と神政連会長を生んだ「ある男」の正体』)。