他のビジネスパーソンと差別化するには、
インプットで工夫をすることが重要

 もちろん「アーキテクト思考」を繰り返し読んで全体構想プロセスを身に付けてもらえると嬉しいですが、ここでは「白紙に第一歩目を記す」ため、インプットに工夫をすることについて解説しましょう。

 私たちの生活は今、多くの情報にあふれています。皆さんの中にも日経新聞以外にヤフーニュースやニュースピックス、雑誌の読み放題サイトに登録をしている方もいるのではないでしょうか。

 それ自体を否定するつもりはありませんが、皆がアクセスしている情報にアクセスしても差別化はできませんし、情報過多になると発想が貧困になる危険性を秘めていることも忘れてはいけません。

 また、将棋AIは自動生成した棋譜(対局中に指した手の記録)を基に深層強化学習をしていますし、小説AIは過去に執筆された小説から文章構成や文章作成の技法を習得しています。インプットの量だけでは、人間は機械に太刀打ちできません。

 そこで重要になるのが、インプットの質ということになります。

 インプットの質向上におけるポイントは、できるだけ1次情報に接するということです。1次情報とは他人の解釈や世間の常識が含まれていないファクトを指します。論文や業界レポートをいくら読み込んでも、それらは既存のフレームワークや業界という枠組みにとらわれたものになります。

 我々コンサルタントは1次情報を得るために、ときにはマレーシアの結婚式に毎週参列したり、インドネシアの高校の授業を実際に受けたりします。

 実際に現場に足を運び、バイアスのかかっていないファクトを自力で集めて自分で考えることこそが、AIには真似のできないことであり、白紙に第一歩目を記すことにつながります。

 次回以降も、読者からの質問に答える形でアーキテクト思考について事例を交えながら解説できればと思います。こちらから質問をいただければと思います。

細谷 功(ほそや・いさお)
ビジネスコンサルタント・著述家
株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ、クニエ等の米仏日系コンサルティング会社にて業務改革等のコンサルティングに従事。近年は問題解決や思考力に関する講演やセミナーを企業や各種団体、大学等に対して国内外で実施。主な著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)、『具体と抽象』(dZERO)『具体⇔抽象トレーニング』(PHPビジネス新書)、『考える練習帳』(ダイヤモンド社)等。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者・IGPIシンガポール取締役CEO
キャップジェミニ・アーンスト&ヤング、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て現職。現在はシンガポールを拠点として政府機関、グローバル企業、東南アジア企業に対するコンサルティングやM&Aアドバイザリー業務に従事。早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)、ITストラテジスト。