ニューノーマルの時代にはこれまでの勝ちパターンは通用しない。変革期に必要な新しい思考回路が求められている。それがアーキテクト思考だ。アーキテクト思考とは「新しい世界をゼロベースで構想できる力」のこと。『具体⇔抽象トレーニング』著者の細谷功氏と、経営共創基盤(IGPI)共同経営者の坂田幸樹氏の2人が書き下ろした『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考 具体と抽象を行き来する問題発見・解決の新技法』が、9月29日にダイヤモンド社から発売された。混迷の時代を生きるために必要な新しいビジネスの思考力とは何か。それをどう磨き、どう身に付けたらいいのか。本連載では、同書の発刊を記念してそのエッセンスをお届けする。

「失われた30年」は、なぜ起こったのか?アーキテクト人材なくして、日本の再生はないPhoto: Adobe Stock

アーキテクト思考とモノづくり思考の違い

 前回はアーキテクト思考とは? そしてその実践者たるアーキテクトとはこんなスキルセットを持った人であるという定義を示しました。

 ところが第一回で述べたように、このような人は(もともと全ての人が全ての場面でこのような思考を持つ必要はなく、限られた場面で必要となるとはいえ)VUCAの時代といわれる現在のビジネス環境において、その必要度に比べて実際の人材は不足していると言えます。

 ここでは、なぜこのようなアーキテクト思考を持った人が必要以上に少ないかを考えてみましょう。それは一言で表現すれば「これまでの日本が得意とし、重要だと思っていた価値観と全く逆の価値観が必要とされる」からです。「日本が得意であること」の象徴的なものが品質の高い画一的な製品を低コスト短納期で作るための、いわゆる「モノづくり」の価値観です。

 アーキテクト思考を、20世紀終わりまでに世界を席巻して日本の高度成長の原動力となった(いまも世界の中では強みとなっている)モノづくり思考と比較して下表のように比較してみます(下図)。