深センの圧倒的な自動車数、おののく周辺都市

 しかし、そもそも、建設前から「シングルY案」と「ダブルY案」をめぐって激しい論争があった。大橋が東では香港と深セン、西では珠海とマカオを結ぶのは「ダブルY案」。激論の結果、深センを外した「シングルY案」が採用され、いまの大橋の形になっている。

 当時「ダブルY案」を採用しなかった理由は非常に複雑だが、一つには、建設コストが高いことが挙げられる。さらに、他の都市、とくに香港が急速な発展を遂げている深センに対して根強い警戒心をもち、ライバル意識があまりにも強かったことも大きな要因になった。

 しかし、在来のビジネスモデルにあぐらをかき、イノベーション意識が低い香港をしり目に、躍進し続ける深センはいつの間にか、グレーター・ベイエリアのエンジンとなった。深センはGDPが香港、広州を上回っただけでなく、都市部の人口も香港、広州を上回り、いまやグレーター・ベイエリアでは規模が最も大きく、しかも最も活気と影響力を持つ大都市となった。一方、珠江デルタで君臨していた香港は、深センの後塵を拝する地位に後退してしまった。

 深センの自動車保有台数を見ても、「香港+マカオ+珠海」の2倍超となっている。加工製造業が集中する東莞(広東省中部にある都市)でさえ、車の保有台数は、「香港+マカオ+珠海」の約2倍なので、それを超す自動車の数なのだ。

世界港湾ランキング、この40年で香港は急降下

 貨物物流に着目すると、東アジアを中心とする経済発展により、東アジアを発着する貿易量、国際物流が猛烈に拡大してきている。さらに東アジアエリア内を観察すると、すさまじいスピードで発展し続けている東アジアの港湾地図も大きく塗り替えられている。

1980年と2020年の世界港湾ランキングを比較すれば、香港の衰退は一目瞭然だ。

一方、2020年は次のようになっている。