皇室が自由になる=現行の天皇・皇室制度の否定

「デイリー新潮」(9月15日)は、秋篠宮妃紀子さまと口論をした佳子さまが「私たちは籠の鳥」というようなことをおっしゃったと報じている。それは決して大げさな話ではなく、日本の天皇・皇室の皆さま方は、「日本国民のため」に「人権」を制約されている、という動かし難い現実がある。自分で車を運転して、外出できるようなイギリス王室メンバーとは明らかに違うのだ。

 だから、心を病みやすい。そんな日本の皇室の方が、国民よりも自分の幸せを優先して、自由に生きられるようになっていく、ということは喜ばしいことだが、それは裏を返せば、現行の天皇・皇室という制度を否定することでもあるのだ。

 このようなセンシティブな議論をすっとばして、宮内庁は「眞子さまの結婚の決定打はPTSD」などと公表した。これから結婚が控える皇室メンバーや天皇制を「守る」意識が少しでもあれば、こんな軽率なことはできないはずだ。

 筆者は報道対策アドバイザーとして、これまで多くの企業のリスクコミュニケーションにアドバイスをしてきたが、もっとも多く目にするのが、「守る対象を間違える」という失敗パターンだ。経営幹部や広報部員たちは、とにかく社長を守ろうとする。

 社長に恥をかかせないよう、批判されないように、その場しのぎの回答を用意する。それで会見の席上の社長は守れるが、それが嘘であったりすることが発覚して、企業のイメージや信用を大きく失墜してしまう。つまり、社長を守ることに頭がいっぱいで、会社が守れないのだ。

 今回の宮内庁も同じ罠に陥っている。結婚に踏み切る眞子さまへの批判を和らげたい。それを認めた秋篠宮家を守りたい。そのような目先のことで思いで頭がいっぱいになって、眞子さまの一般人になってからの生活や安全、そして皇室を守れていない。

 公表すべきは、眞子さまの「病」ではなく、小室母子の金銭トラブル解決に向けた進捗だ。ここまで大きな騒ぎになって、なぜ相手と向き合わないのか。直接話せない事情でもあるのか。結婚前にそれを公表すべきだ。

 スキャンダルで炎上する企業も、「なぜマスコミはこんなに叩くのだ」とよく逆ギレする。宮内庁も、なんでもかんでも「誹謗中傷」で片付けるのではなく、なぜここまで国民に祝福されないのかということを真摯に受け止め、皇室と眞子さまを守るリスクコミュニケーションをすべきではないか。

(ノンフィクションライター 窪田順生)