物価上昇はわが国の個人消費に打撃
先進国の金利は上昇し始めた

 それは、わが国を取り巻く経済環境の急速な変化を意味する。米国などは必要に応じて市場に政府が介入することによって、自国経済のパイを大きくしようとし始めた。

 90年代以降、主要国は経済のグローバル化を推進した。グローバル化によって国際分業体制が確立され、企業の事業運営の効率性は高まった。その結果、民主主義を支える中間層が、まるで遠心分離機にかけられるかのように一部の富裕層と、大多数の中低所得層に振り分けられた。

 その結果、経済の格差が拡大し、社会心理は不安定化した。さらに米中対立の先鋭化やコロナ禍の発生、感染再拡大などによってグローバルな供給網が混乱し、足元では供給制約の問題が深刻化している。

 米欧各国は、自国の経済成長を、自力で目指すために補助金政策などを重視し始めた。自国内で企業の設備投資を増やし、雇用を創出するためだ。それは消費の増加、さらには所得の再分配機能の強化を促す。米国のバイデン政権はインフラ投資や半導体、高容量バッテリーなどの生産を支援している。欧州では独仏が中心となって欧州復興基金が創設され、脱炭素などへの取り組みが加速している。

 他方、コロナ感染再拡大などによって世界経済の回復は足踏み感も強まっている。もし、中国の不動産市況が悪化し、中国経済が大きく減速すれば、間接的に世界経済にマイナス影響が及ぶだろう。それはわが国経済を減速させる要因になる。

 コロナ禍による供給制約の深刻化や、石炭などのエネルギー資源価格の高騰などによってインフレ懸念も高まっている。物価上昇はわが国の個人消費にかなりの打撃だ。さらに、米国の金融政策が調整される可能性も高まり、先進国の金利は上昇し始めた。それは株価の調整圧力を高め、社会心理に負の影響をもたらす要因になり得る。