2022年卒の就職内定率は、7月時点で鈍化していない2022年卒の就職内定率は、7月時点で鈍化していない 拡大画像表示

 月ごとの就職内定率(グラフ)からは、就職活動、採用活動のプロセスに影響が出たことが読み取れるという。

「21年卒は、20年5月から内定率の伸びが鈍化し、その後は対前年比マイナスで推移し、3月の卒業時点でようやく0.7ポイント上回っています。20年春から夏にかけては緊急事態宣言などで就職活動も止まってしまい、秋から21年3月にかけて上がっていったことがわかります。一方、22年卒の就職内定率は、7月時点までのデータでは鈍化することなく推移しています」

 コロナ禍で進んだオンライン採用に関しては、学生も企業も急遽対応が求められた21年卒を経て、22年卒はスムーズに進んでいるという。

「22年卒では、対面とオンラインのすみ分けが進んでいる印象です。最終面接以外はオンラインという企業が多く、グループワークもオンラインで行うケースが増えています。コロナ禍も2年目になり、学生も企業も慣れてきたというところでしょうか。一方で、学生を見ると、昨年1年間オンライン講義が続いたことで気持ちが落ちてしまい、いざ就職活動となってもやる気が起きない、次の目標を探せないという学生がいるのも事実です」

市場を読み解き
成長企業を見つける

 常見さんは、就活をする学生に対して、社会の状況を把握し、市場を読み解くことの大切さを説く。

「DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉をよく聞くと思いますが、今はデジタル技術の進展によって、すべての産業で構造変化が起きており、企業は対応が求められています。たとえば銀行なら、ネットバンキングなどITの導入により支店の統廃合が進んでいきます。この結果、3大メガバンクの新卒採用は16年がピークで、毎年下がり続けています。そうした状況で、コロナが決定打になったわけです」

 さらに、世界市場で圧倒的な存在感をもつGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)などの企業に比べ、日本企業の存在感が薄くなっていることも指摘する。

就職力で選ぶ大学 2022『就職力で選ぶ大学 2022』
定価998円
(朝日新聞出版)

「平成元年の世界時価総額ランキングでは、上位50社中32社は日本企業で、さらにトップ5を日本企業が独占していました。しかしながら平成31年になると、上位50社に入った日本企業はトヨタ1社のみ。世界と大きな差が生まれている現状を把握したうえで、新たな分野、成長企業を探すことが重要です。これは、学生だけでなく、大学の教職員も一緒になって努力すべきだと考えています」

 先行きが不透明で不安を感じがちな今、社会に求められる人材になるために、学生時代にどんな力を身につければいいのだろうか。

「今は、100年に1度起こる変化が、毎年起きているような時代。社会に求められる像に自分をあてはめていくよりは、変化する時代に向き合いつつ、これまでをいったんリセットして、これからの社会をデザインする力が必要になると思います。コロナ禍によって抱いていた夢が破れた人も多いと思いますが、今後は新しい分野が必ず生まれてきます。新しい社会をつくる気持ちで、就活に取り組んでもらいたいですね」

(上野裕子)

〇常見陽平
つねみ・ようへい/千葉商科大学国際教養学部准教授。1974年北海道生まれ。一橋大学商学部卒業、同大学大学院社会学研究科修士課程修了。修士(社会学)。リクルート、バンダイなどを経て、2015年から千葉商科大学国際教養学部専任講師。20年から現職。

AERA dot.より転載