2009年の民主党の政権交代
今と何が違うのか

「野党共闘肯定論」として、2009年の総選挙の際に、共産党が小選挙区の候補者を取り下げたことが、民主党の政権交代実現に貢献したとされることがある。しかし、当時の状況は、現在の野党共闘とはまったく違うと指摘しておきたい。

 当時、共産党は選挙で連戦連敗だった。そのため、全国の選挙区で「供託金没収」が続出し、党の財政事情が悪化してしまい、候補者を減らさざるを得なかった。

 一方、政権交代に向かう民主党の勢いは非常に強かった。「自民党を一度懲らしめよう」という層も取り込んで、共産党の票を必要としていなかった。だから、民主党は政権獲得後に、共産党を完全に無視した。

 要するに、「候補者を取り下げてやるから、我々の政策を実現しろ」という共産党の強気な態度に立憲民主党がズルズル応じていくという現在とは真逆の状況だった。現在の「野党共闘」とは、政権の座を狙うべき野党第1党・立憲民主党に勢いがまったくない。共産党の票に頼らねばならない、情けない状況だということだ。

さも正しいことを言っているようだが
情けない野党共通政策

 野党共闘が訴える「政策」になると、さらに情けない話になる。立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組の4党は、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(以下、市民連合)なる団体と、「野党共通政策」を合意した。

 野党共通政策の提言の骨子は、(1)憲法に基づく政治の回復、(2)科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化、(3)格差と貧困を是正する、(4)地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行、(5)ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現、(6)権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する、の6つである。

 言わんとすることは理解できなくはない。