ネット投票を解禁した場合に起こりそうな
新たな「選挙違反」とは?

 残る問題としては、これは日本の社会的な問題だとも思うのですが、3番目のネット投票時代の新しい選挙違反への危惧が大きいかもしれません。

 非常にわかりやすく例示すると、高齢者施設や障がい者施設で、運営者が入居者のスマホとマイナンバーカードを預かってしまい、勝手に投票したらどうするのか? という問題提起があります。実際に選挙になったら本当にそんな事件が起きそうです。

 海外の事例では他人に投票されてしまった人も、後から自分で投票でき、かつ後から投票した票を有効票とするような仕組みが作られています。ただ、それだけではこの例で挙げたような弱者の票を奪う犯罪は防ぎきれません。となるとこの問題を解決するには、私は厳罰化しかないと思います。

 そもそも、ネット犯罪は通常犯罪よりも手を染めやすい側面がある分、抑止力としての厳罰化が重要なのです。たとえばネット選挙での選挙違反は実刑でかつ凶悪犯と同等の刑罰になると決められ、それが周知されれば、そこまでして選挙違反に協力しようとする人は減るはずです。

 さて、このようにして問題点を克服して、ネット選挙が導入されれば民主主義は一見、よくなりそうです。

 日本では若者の投票率が低いことが社会問題だとされています。若者が収めた税金が高齢者の社会福祉にばかり使われているのは、投票率の高い有権者の方を政治家が向いているからだ、という説はそこそこ根拠のある説のようです。若者にとってもよりよい未来を望むのであれば、若者の投票率を上げるべきで、その手段としてネット投票は一番の解決策になるという意見は論理的に見えます。

 実際、民主主義国家同士の比較で見ると日本は投票率が低い国のグループに入ります。いわゆる西側諸国であるOECD加盟国を例に取ると、オーストラリアの投票率は90%台、ベルギー、スウェーデン、トルコ、デンマークなどが80%台、ドイツ、イタリア、スペイン、カナダ、イギリスなどが60%台後半から70%台と高いのに対し、日本は50%台の下の方です。

 そして、ネット投票の推進がこの状況を変えてくれそうなのですが、ここに新たな問題点として裏事情が登場します。